kobeniの日記

仕事・育児・目に見えない大切なものなどについて考えています。

「婚外恋愛」と「1122」のはなし

 

「婚外恋愛」っていうドラマがありまして、ひとり鑑賞会を行っていたのですが、無事に最終回を迎えまして、誰かに感想を言いたくて言いたくて震えているので久々にブログを書きます。

そもそもこのドラマ、2002年にテレビ朝日系列で放映されていたもので、DVD化などもされていません。私は当時の録画をお持ちの方から頂きました。出演者に不祥事があったとかで、再放送もされてないみたいです。主演は、永作博美(当時31歳)と堺雅人(当時28歳)。あ、まず大前提として私が堺雅人の重度のファンなので、それを前提に読んでもらえたらと思います。だからこのドラマ、主演が先の二人じゃなかったら、私がどれだけハマったかは未知数…未知数ですごめんなさい。でもね、そもそもね、俳優としては遅咲きの堺さん(新選組!でのブレイクが2004年、その時既に30越えてる)を、ほぼ実年齢の役で、主演に抜擢してくれた目利きのスタッフと事務所の力wにもう、感謝しかない。ありがとう田辺エージェンシー。永作さんも、今も大変な美人ですが当時はもう眩しすぎて可愛くて私が結婚したい、永作さんと。

どうして当時観てなかったのかな?と考えたのですが、私この頃に就職したばっかりで、結婚にリアリティとか全くなかった。まして婚外恋愛など!というか、そもそも自分がこのドラマの主人公のように、夜の22時くらいまで働いていたので、放映時間だった木曜日21時に家に帰れておりませんでしたww 

職業の設定とか、二人の住んでるマンションや出てくるバーなどが今見ても割とオシャレなこと等を考えると、トレンディドラマの残り香がある作品なんだなと思います(私も夜中まで働いてましたが全くトレンディではなかった)。

 

何が良いかって単純に、今の自分の理想にかなり近い夫婦を、15年前に自分の推しが演ってたという…その…奇跡に尽きる!!だからこれが堺雅人主演じゃなかったら私は(ry くどい!

まあいいや、ちょっとこの夫婦について説明しますね。

 

湯浅みつる 30歳。女性ファッション誌「アバンティ」の編集者。仕事が好きで、いつも夜遅くまで働いている。会社では既に中堅社員、そろそろデスクに?という年齢だが、「仕事のためならおっさんの接待でもなんでもする」というがっついたスタンスのため、後輩女子たちに「ついていけない」と思われている。お姑さんとおりあいが悪い。

 湯浅拓也(タク)28歳。プジョー中目黒店(!)に勤める外車ディーラー。出世欲がないせいか、たまにパワハラ気味の上司に「やる気あんのか」「やめちまえ」とか言われている。妻のみつるの仕事を尊重した結果、前職を辞めた経験がある。趣味は飛行機の模型をつくる&部屋で観葉植物を育てること。エプロンが似合う。

 

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ね、いいでしょ!?良くない? 二人の出会いはスキーサークル的なもののようです。プジョーの車に乗って想い出のスキー場に行ったりしている。フーぅ、トレンディ☆堺さん本当は当時、免許も持ってないはずだしスキーも全く滑れないはずだけど!

 

現代ではあまり珍しくなくなった、「夫の方が家庭的」という夫婦像なのですが、当時はまだ全くメジャーではなかったんじゃないかなあ。だって、15年前ですからね。私は堺さんの中性的なところが好きで(というか、そこを嗅ぎ取って)ファンになったのですが、この時点で彼にこの役が来るということは、昔からそういうイメージの人だったんだなあ、私が知らなかっただけで。半沢直樹・リーガルハイ・真田丸の印象から入った私には、とても新鮮なのでした。

 

15年も前なので、ジェンダーロール(一般的な夫婦像)に逆らって生きるこの夫婦には、今より風当りが強いです。象徴的なのがお姑さんで、気まぐれに二人の家にやってきて「どうして子どもをつくらないのか。なぜ家にもっと早く帰らないのか。息子のためにキチンと栄養のある料理を出してやってくれ」とか言ったりします。困るよね…気まぐれに来ないでほしいw

みつるは毎日遅くまで働いて、夫に家事を任せていることにどこか罪悪感があり、お姑さんにも反論しません。まあ、仕事ばっかりしていると夫婦はすれ違いになりがちですよね(身に覚えが…)。そんなこんなでこの夫婦はセックスレス…というところから物語が始まります。(wikipedia見ると一番上に「セックスレスの夫婦を描いたラブコメディ」って書いてあるんですが、コメディ要素はまったく無かった気がしている)

 

何が「婚外恋愛」か、という話なのですが、タクにですね、急接近してくる女性が登場するのです。志津香(釈由美子)っていう。実はタクのことを学生時代から好きで、ストーカー的に接近し、今の得意技はオーバードーズ、っていう困ったちゃん。この人の夫が謎の会合に参加していて、そこでは夫婦の取り換えパーリー的なものが行われているという、ちょっとこのあたりアレな設定なので割愛します。いや、この辺は割とどうでもよくてさ……

 

さすがはドラマ、よくおわかりで!と思うのは、二人に近づいてくる恋人候補が「今の夫/妻と正反対」っていうところなんですよね。タクには、しっかり者で甘え下手なみつるとは正反対の、お人形さんみたいで震えがちな志津香が。彼女は専業主婦で、いわゆる「かごの中の鳥(実際に鳥飼ってる)」。みつるには、自由奔放でワイルドみある元カレの亮馬(原田龍二)がスペインから帰国wして近づいてきます。「俺について来い!(実際にスペインに連れて行こうとする)」系。ものすごくベタな展開なはずなのに、たいへん夢中になって観ていた私…バカなのか……いや、だがしかしこの4人の設定、実は凄く練られている気もする!妻にあまり頼られたことのないタクに、頼りすぎる志津香!仕事を失うとアイデンティティが崩壊しかねないみつるの職場でのピンチに、仕事込みで助け舟を出そうとする亮馬!!

 

タクは基本的にずっと「みつるが大好き」「やりなおしたい」というスタンスなのですが(最高か)、「優しすぎる(byみつる)」ため志津香をハッキリ振ることができません。8話ぐらいでタクが「そりゃ正直、『(志津香)に頼られて嬉しい』っていう気持ちはあったよ。だって、みつるはほら、あんなだし」と親友に打ち明けており、私は「な、な、ナンダトーーー!!!!」と夜中にコタツをひっくり返しそうになりました。うう…一人で生きていけるように頑張ってきた結果、男にモテなくなるなんて…心当たりがありすぎる!タクのバカ!!

 

まあでも、先に書いたように、「いわゆる夫婦像」とはちょっと違うDINKS夫婦だからこそ、自分たちで考えていかなければならず、二人はいつもちょっと自信がない。「こんなに仕事ばっかしてて、夫をほったらかしにしてきた私が、彼を縛る権利なんかあるんだろうか」。「妻の元カレが仕事相手になってしまったけど、彼女は仕事がとても好きだし、『会うな』とは言えないよね」。後半クライマックスを迎えるのですが、「結婚は、どのくらい相手を、精神的に・物理的に縛ることができるのか」とか、「人は、何人の人を責任もって大事にすることができるのか」「子は『かすがい』なのか否か」みたいな、普遍的なテーマに近づいていきます…

途中、みつるの「それじゃまるで(あなたが)恋してるみたいじゃない!」というセリフに対して、タクが「(図星……)」という表情をするシーンがあるのですが(冷静に見るとけっこう笑える)、結婚していようと相手の恋心を消すことはできないですよねえ。私は、人間が複数の人を同時に好きになることは「余裕でできる」と思っているのですが、だからこそ、結婚というルールが意外と大事なのかもと思います。二人はある意味、外で別の恋人を助けたり、助けられたりもしていて、でもだからといって「一番」が入れ替わることはない。全編通して、お互いを手放してはまた追いかけたりする二人を見ていて、「適度に自由で、適度に縛りあってることが結婚の良さ」でもあるなあ、とか思いました。

 

 

オープニング映像がとても良くて、幸せな新婚生活~出会ったきっかけまでを、逆回転で遡るムービーになっている(これだけは、探せばネットの海のどこかで観られるかも…?)。3~7話ぐらいまで、ちょっとしたすれ違いがどんどん重なり、別れ話も出るようになる中で、流れるオープニング映像がこの「結婚式のなれ初めムービー」みたいなやつ。回を経るごとに「こ…こんな素敵な出会いと結婚をした二人だったのに…どうしてこうなった」と、胸の痛みが増すようになってくるんですよw。そして、しかも、驚くことに、9話で順序が!!出会い~結婚まで正しい順番に戻るんですよ!!すごい!!もちろんドラマ本編とリンクしているんですけどね!!!!ああ、すいません。興奮してしまいました。もう観られないドラマだって言ってるのに……

まあさ…結婚っていうのは、歴史だよね。唯一無二の、二人の人生のちいさなムービーだよね…………(号泣

 

 

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とまあ、色々書いてきましたが私が最も言いたいこと、それは推しが可愛い」。たぶんこのドラマの影響で観葉植物、というか苔を育てることにハマってしまった堺雅人が可愛い。「みつるは、仕事の話している時がいちばんイキイキしてるな」って笑顔で言ってくれて、自分の母親にも「みつるは編集の仕事ずっと頑張ってきたんだよ、そんな言い方するな!」って怒ってくれて、みつるが仕事辞めざるを得なくなった時に転職先を一緒に探してくれるタクが可愛い。そんで元カレの方が自分よりもしっかりした仕事のツテを持ってきたら、みつるの人生を考えれば…って身を引こうとするバカなタクが可愛い。(←すっごい強調してしまった…)堺さんと永作さんのファンには観てほしいから、いつか再放送でもしてくれたらいいのに…と、すごく思います。

最終的には、良い感じにハッピーエンドで終わります。連続ドラマの視聴者、既婚主婦層がいちばん多いからねえ(突然のマーケティング脳)。私も二人の絆の強さに安心しました。夫をもっと大事にしよう…。

 

いろいろ調べたら、プロデューサーの方が今は「ドクターX」とか制作されている内山聖子さんでした。男社会の中でバリバリ働く女性の気持ちや、ドラマで女性が主人公に言ってほしいこと、よく分かっている方々がつくったんだなあ。均等法第一世代バンザイ!本当にありがとうございます!と思いました。脚本は「ラブジェネレーション」などの浅野妙子さんです。

 

 

さて、そうはいっても、今は観られないドラマの話だけじゃつまんないですよね。最近また「婚外恋愛」が話題になってるの、知ってますか?「1122(いい夫婦)」っていうマンガがあるのです。私は昔から渡辺ペコさんのファンなのですが、とっても楽しみにして読んでいます。

著者の渡辺ペコさんと私は同世代(たぶん私の方がちょっと上)なのですが、とりあげているテーマがいつも「新しくて身近」なことが多いです。LGBTについてもかなり前から漫画に出てきていたし、最近だと、子どもを産むことや老いや死について。年を経るごとにどんどん内容に深みが増していく感じがしています。で、「婚外恋愛(夫婦公認不倫)」です。

 

1122も、経済的にはそれぞれ独立したDINKSの二人が、平穏な結婚生活を送っているが実はセックスレスである。webデザインの仕事をしておりちょっと女子力低めwの一子(いちこ)(35)と、お花が趣味で家事に積極的なやさしい夫・二也(おとやん)。あれ、「婚外恋愛」の二人と似てますね。現代ではこういうカップルが増えているということもありそうだし、テンプレ的な夫婦の「外」を描く方が、「結婚とは何か」と言うテーマに迫りやすいのかな、とも思いました。

 

ここまでの「1122」で、印象に残っているのは、いちこちゃんが体調を崩して、駅から帰れなくなってしまった時に、おとやんが雨の中探しに来てくれるところ。いちこちゃんは実母とおりあいが悪いのですが、おとやんはその二人の間に緩衝剤として入ってくれて、「いちこの実家」もひっくるめて背負う覚悟を持っていること。いい夫ダナーと思うのですが、この先、外の恋愛が、ふたりをどうやって引っ掻き回すのか(ウヒヒヒ…)気になります!そして「1122」でも、「結婚は、どのくらい相手を、精神的に・物理的に縛ることができるのか」「人は、何人の人を責任もって大事にすることができるのか」「子は『かすがい』なのか否か」というようなテーマについて、詳しく描かれていくのでしょうか。

 

 

あと私、こういう作品を観る時、私は「夫/妻がお互いをどう呼んでいるか」にすごく注目してしまうのですが、「婚外恋愛」では、タクは「みつる/お前」、みつるは「タク」と名前で呼んでいました。タク、呼び方だけはちょっと男らしいんだよね。いちこは「おとやん」おとやんは「いちこちゃん」と名前呼びです。

 

非常にとりとめもなくなってしまいましたが、この二作品を見ていて「夫への愛と推しへの愛は別腹」という友人の言葉を思い出しました。「1122」でいちこちゃんの友人が、「性欲(愛情)をどうやって処理しているか」と問われて「岡村ちゃんと犬」と答えていましたが、女性って愛情あふれる生き物ですね。なんだこのまとめ……

現在進行形で読むことができる「1122」をまずはどうぞ!婚外恋愛、もしリアルタイムで観ていたという方がいたら、一度じっくり、キャーキャーと語り合ってみたいものです……!

 

 

 

 

 

1122(1) (モーニングコミックス)
 

 

 

1122(2) (モーニングコミックス)
 

 

 

 

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 つまみぐいをしようとして…

 

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タクにペチッって叩かれるみつる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年のワーキングマザー生活を振り返る

ついに2016年も終わりますね。みなさんはどんな一年だったでしょうか。私が最近すごく感じているのは、自分がどんどん「ワーキングマザーの当事者」から遠ざかっているということです。いちばん悩むのはやはり、仕事復帰1年目だと思うのですが、年を追うごとに子どもは成長し悩みが減っていき、そして、世の中の「働くママ」に対する扱いもどんどん、良い方へ変わっているという風に感じます。けれど私がかつてとても悩んでいた「仕事と育児の両立」についての諸問題が、何もかもすべて解決した…というわけではないし、あくまで私個人が、「最も大変だった時期を抜けた」に過ぎないのだという自覚を持っています。

そこで、今年の年末は、個人的な両立生活(主に仕事面)についての振り返りと、世の中が「仕事と育児の両立」をどう扱ったか、印象に残ったことについて書いてみようと思いました。

 

■「サラリーマンというシステム」に所属すること

 

今年の上半期は、自分の仕事の中で同じプロジェクト内に休職者が出てしまったり、立ち上げのために「未決・未解決」のものをかなり残したまま、業務が走り出すことになったりで、所属する組織、その周辺組織のあり方に疑問を持って過ごしていました。

あんまり細かい業務の話までする気はないのですが、「経営・組織運営は難しい」としみじみ思う一方で、「自分の隣にいる人が、明らかに業務が大変そうとか、調子悪そうにしていることに気付けないなら、私たちには組織で集まっている意味はあるんだろうか?」…という風に思い、一時期すごく悩んでしまったのでした。

私の所属する部署は、プロジェクト単位で仕事が進むので、気をつけないと「同じチームの隣の人が何をしているのか分からない」という状態に陥ります。たとえば「全員業務委託・フリーランスの集団」なら、それでも問題ないのですが、我々の場合は、プロジェクト単位に分かれているといっても、あくまで「組織・チームとして仕事を受けている」のです。

さいきんフリーランスになった夫を近くで見ていると、やはり業務量コントロールにいちばん苦労しているように思います。仕事を受けすぎても自分しか処理する人がいないし、かといって減らしすぎても収入が激減してしまいます。

組織でいることのメリットとは、やはりこの業務量や内容のコントロールがしやすい、ということではないでしょうか。

仕事にはどうしても繁閑の波や、始まってみるまでわからない困難さなどがあります。けれどそういった困難さに対処するために、複数のメンバーで構成されているのではないか?(もちろんそれ以外にもメリットはあるのだろうが)…と、すべてを自分ひとりで負っている夫を見ていて思います。

私が「時短勤務中」といった立場でこのようなことを言うと、「あなたの夕方以降の仕事を誰かが代わってくれればいいってこと?」と言われてしまいそうです。

「あふれた業務を誰かが代わりに処理する」は、いちばん最初に挙げられる方法かと思いますが、サラリーマンというシステムの中で、工夫できることはもっとたくさんあるんじゃないかな、と思っています。

 

たぶん、「マネジメント」って本来はものすごく面倒くさいんじゃないか。仕事が、川の流れのようなものだとすると、その水をどこまで引き入れるか、引き入れた水を誰のところにどう流すか、日々移り変わる流れを見ながら細かくコントロールしなくてはいけない。メンバーの抱える事情とか、価値観、ライフスタイルが違ったり、また変わったりする。社会もまた変わるので、水の量や質、つまり稼げるかどうかも変わる。ただ、昨今、長時間労働とか過労死などで大きく問題視されているのは、「この川の水をえんえん組織に流し入れっぱなしにする」というのはダメなんじゃないのか、それでは労働者はあふれた水に流されてしまうのではないか。ということではないか……と思います。「水流し入れっぱなし」でもなんとなかった時代、「人の管理」がもっとシンプルだった時代があったのかもしれません。でも今はとにかく、そうはいかないのだと、多くの人が感じているんじゃないでしょうか。

 

私は管理職を経験していないのですが、この「めんどくささを引き受ける」人が、子育て中などの事情を抱える人間にとっては本当に「命綱」になるのです。

いまの私はサラリーマンなので、「サラリーマンというシステムがあって良かった」と、そう思える組織、企業、社会とはどんなだろう。ということを、色々と悩み、考えさせられた上半期でした。

 

 

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■ やっと「マミートラックを抜けた」かもしれない8年目

 

今年は「保育園落ちた日本死ね」も話題でしたが、「マミートラック」というワードも話題になりました。マミートラックとは、子育てを理由にその企業における正規のキャリアルートから外され、責任や負荷の低い仕事を「同じトラック(陸上競技における専用レーンのこと)をぐるぐるまわるように」させられ続ける。といった意味を持つワードです。主に母親が陥りがちなので、「マミー」とついています。

私自身の話でいくと、あんまり「正規のキャリアルート」があるように思われない企業にいるので、「同期に比べ出世が遅れる!」と焦る、みたいなことはありませんでした。しかし、とはいえ、「どうも不完全燃焼のような気がする」といった状態が、長く続いていたことは否めません。

日本企業の慣習上は、「責任の重い仕事=長時間労働が必要な仕事」であることが多く、昇進したい・難しい仕事に挑戦したいと願えば「その代わり労働時間は長くなる・夜の業務も発生する・休めない・転勤がある」などの条件がついてくることが多いです。それらは、新しい挑戦を躊躇させるには十分です。「この仕事って本当に、私の力を十分に発揮できるんだろうか」「早く帰れるけど去年と何も変わっていない」みたいな疑念を飲み込んで、「子育て中だから仕方ない」「早く帰れなくなるのは困る」「働かせてもらえるだけありがたい」そう思って、やってきたところがある。けれど今年の後半に入ってからは、そういったモヤモヤがあまりありません。

 

-「やりたい」「挑戦したい」と思える業務であること

- 自分の能力を発揮できている業務であること

- 組織にとっても重要な業務であること

 

今あんまりモヤモヤしてないポイントはこの3つかなと思っています。かつ、それと引き換えに夜中まで残業しなければならなかったり、休めなかったりを強制されることはありません。残業して結果を出しても私はあまり嬉しくないので、労働時間はなるべく短くなるように心がけています。

なぜこれらが今、うまいこと叶っているのか? と理由を考えてみるに……

まずは

 

- やりたいことをずっと(ちょっとウザいぐらい)言い続けていた

&それを聞き入れる組織と上司であった(なので、これという仕事が来た時にふってもらえた)

 

ということがあると思います。「やりたいこと」は、ずっと変わらない要素もあれば、変わっていく部分もあるので、わりかし、こまめに上司と話をする機会を持つのが大事かなと思いました。もちろん「今は家庭の状態から考えて、挑戦できない」と、伝えた時期もあります。

 

あともう一つは、夫が働き方を変えたことが、結局は大きいような気がしています。

いくら「残業を強制されない」といっても、やっぱり「毎日おなじ『ではない』要素を含む業務」というのは、まとまった時間をとって考えたり整理したりすることが必要になります。まあ、要は、週に2回ぐらい残業できると大変助かる、ということです。一時期、私しかお迎え以降に対応できる人がいないので、毎日かならず16時半に会社を出ていたのですが、もしその状態で今のような挑戦をするとしたら、もっともっと努力が必要だっただろう…できないことはないかもしれないけれど、心の余裕は全然ないだろうな私。とは思いました。今は下の子がまだ保育園なので、病気は減ってきたとはいえ、お迎えは必須ですから。

 

今年の秋ごろ、「マミートラック」がNHKのニュースで取り上げられた時、SNSの反応を見ていたら「早く帰りたい、休みたい上に昇進もしたいとか贅沢すぎる」といった声も多かったです。保育園の待機児童の問題もそうですが、マミートラックの「実体」がリアルに想像してもらえるようになるには、まだしばらく時間がかかるのかなと思っています。

 

「『早く帰りたいけど昇進もしたい』と言っている母親」と、

「『子供のお迎えができる時間に帰宅したい。だが仕事ではこれまでどおり、自分の能力を磨き続けて、ずっと切磋琢磨してきた同期と同じように成長したい』と言っている母親」

って、まったく別人のように聞こえないでしょうか。

 

また、

「子どもがいるし、大変な仕事はもうしたくない。定時で帰りたい」と

「『また休み?』と言われる度に、いたたまれない気持ちになった。夫が夜遅いので、昇進して夜の業務を任されても対応できない。昇進試験を諦めるのは仕方ない」

というのも、まったく別人みたいですよね。

後者は、私の友達から聞いた話……だったりするのですが。

 

学問的に労働問題に取り組んでいる方々の世界にはすでに、「過剰な配慮」とか「意欲の冷却」とか、そういった言葉が存在しています。

2017年は、せっかく注目されるようになった「マミートラック」が、このようなワードの助けも借りて、ざっくりしたイメージでなく「実体」に近づいていく一年になればいいと思います。

 

ワーキングマザー歴8年目にして、じわじわマミートラックを抜けつつある私。また来年は「3歩進んで2歩下がる」みたいなことも、大いにありえると思っています。それでも、いまモヤモヤしている人には、「だいじょうぶ。いつか自分が納得いく『仕事と子育ての両立』にたどり着けると思うよ」と、言いたいと思うのでした。わたし来年もボチボチがんばりますので、一緒にがんばりましょう。

 

 

サプリ 1巻 (FEEL COMICS)

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サプリ全11巻完結セット

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Etsyで世界を旅しよう vol.2 ロシアのX'mas絵はがき・ウクライナの中世コスプレ

「シリーズ化希望!」とコメントくださった方がいたので、続けてみたいと思います。今日も今日とて、疲れるとEtsyをダラダラ見て、トキメキを思い出しているkobeniです。

"クリスマスが近づく場所で 元気に挨拶を交わしたい" てなわけで、冬が来ますね。ツリーの用意はいいですか? お部屋の飾りつけは始めていますか。今回はまず、「ロシアのホリディシーズン用・ビンテージ絵はがき」からご紹介します。

そもそもなぜロシアか? というところに特に理由はないのですが、Etsyには「なぜかこの国のこの出品ジャンルが多い」というような傾向がある気がしています。そして、絵はがきというのは単価も安いし、ビンテージなら一点モノなので見つける楽しみもあり、Etsy初心者にはとても購入しやすいのではないか、と思っています。私も、二度目ぐらいのお買い物で、ロシアのビンテージショップの絵はがきを10枚近く買いました。

 

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New Year's Print Postcard by V. Begishev by RussianSoulVintage

 

ね? すっごいかわいいでしょ。年末は忙しくてクリスマスの飾りつけなんかできねえよ!! という方も、こういう絵はがきをフォトフレームに入れて、玄関や棚に飾るだけでも、グッとクリスマスらしくなりますよ。いま買えば、まだX'masに間に合うと思うし。

 

ロシアのクリスマスハガキを見ていると、「なんか変だな…」と思うところがありました。まず、青いサンタがいる。それから、なんだか主張度強く登場してくる、「雪の女王」(エルサ?)みたいな女子がいる。

 

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Happy New Year Vintage Soviet Postcard. by RareBooksAndMore

 

ちょっと調べたらすぐわかりました。この女の子、「サンタの娘」だった。

 

ロシアではサンタクロース以上にクリスマスには欠かせない重要なキャラクターがいるんです。それが雪娘と呼ばれる“スネグーラチカ”です。ロシアのサンタクロースであるジェドマローズの娘だと言われています。元々はジェドマローズの脇役に過ぎないキャラだったのですが、サンタのおじさんを怖がる子どもたちをなだめる中間役として徐々に人気を得るようになり、今ではクリスマスには欠かせない子どもたちに人気なキャラクターとなりました。ロシアのクリスマスは、サンタクロースの隣に”サンタの娘”がコンビとなって存在するのです。

ロシアのクリスマスは何だかスゴイ!ロシアが他とは違うところ4つ

 

「ジェドマローズ」は、シベリア極寒の地で生まれた青いサンタ、とのことです。サンタを怖がる子どもがいるって、どういうことなの……プレゼント配る気なくなりそうですね。

上の記事にも書いてあるのですが、ロシアのクリスマスは1月7日なのだそうで、お祝いするなら新年の方が大事。つまりこの絵はがきは「年賀状」みたいなものとも言えるのかな? だから、なんとなく豪華で、種類がたくさんあるのかもしれません。サンタがいるのに、「new year postcard」と書いてあるものばかりです。

 

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Happy New Year Vintage Soviet Postcard. by RareBooksAndMore

 

ちょw マトリョーシカがスキーしちゃってるよ。ロシアのビンテージ絵はがきってなんだかどっかユーモラスなんですよね〜。

ちなみに、革命の日のイラストが描かれているとか、あとspace race(冷戦中にアメリカ合衆国ソビエト連邦との間で行われた、宇宙開発競争のこと)の絵はがきなんかもあるんです。

 

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Vintage Happy New Year Postcard 1968 Soviet by RussianSoulVintage

 

ほら、ロケットに乗っている。でもなんかほのぼのしているw 

ロシアってアートもなにげに有名な国だったりしますし、チェックしてみてください。

 

ロシア・アヴァンギャルドのデザイン 未来を夢見るアート

ロシア・アヴァンギャルドのデザイン 未来を夢見るアート

 

 

 

次、ウクライナの中世コスプレです。

Etsyってホントに、「な、なんぞこれ…」という商品に出会えることがたまにあって、世界は広いなあと感じざるを得ないのですが。

ワンピースとかドレスを探していて気がついたのが、「ウクライナの人はおしゃれ」ってことです。アパレルのハンドメイドショップでウクライナのお店が多いんですよね。

ニュースになる時は内戦のことなどが多くて、「だ、大丈夫かな…」という感じもあるのですが。

そんな中でたまたま見つけたのがこのお店でした。

www.etsy.com

「中世・ルネサンスバイキング・エルフの衣装、鎧」。

詳しくはよくわからんのですが、ヨーロッパには「中世フェス」みたいなお祭りがよくあるらしいんですよね。そこではみんな中世の格好をするのでしょう。それが好きだったり、RPGゲーム(中世ヨーロッパ的なところが舞台になりやすい)が好きな人たちが作ったお店らしいよ。

フランスの中世フェス。

Les 34ème Médiévales de Provins “Lumières et Couleurs du Moyen Âge”

 

 

私は町娘。ある日魔物に家を襲われて、弓を学んで親の仇を討つの。

 

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エルフ族の掟を守らない奴は許さぬ!

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おお、そなたが彼の名高き勇者か。

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白魔法が得意なの。

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やー、素晴らしいですよね。私もドラクエとかFFとか好きなので、このお店の服を見るのはホントに楽しいです。というか、お金出せば買えるんだねこれ?! って思いました。姫よりも、町娘とか武闘家みたいなの? を着てみたいわあ。

 

 

いかがでしたでしょうか。vol.2。

オシャレなモノかわいいモノもあるEtsyですが、「ヘンなモノ」もたくさんあるので、次はそういうモノを特集してみようかな。勇気を出して買ってみたい、ちょっとヘンなもの特集。

 

 

 

 

 

Etsyで世界を旅しよう vol.1 リトアニアの手ぶくろ・メキシコのオトミ刺繍

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Etsy の Merino wool mittenswarm winter gloveswool by WoolenDream

 

 

Etsyってご存知ですか?

世界中のハンドメイド・ビンテージのアイテムが買えるサイトです。手作りしている人や、アンティークショップなどが出店しています。

私は去年ぐらいからずっとEtsyにハマっていて、実はあんまり買ってはいないのに、暇があればずーーーっと見てたりします。

ずっと見ていて気づいたのですが、国ごとに「得意なハンドメイド・ビンテージ」の特徴があるんですよ。まあ、そりゃそうだよね。日本だったら、着物とか、和風のデザインとか、アニメ的なイラストとか、得意なわけだし。でも、「かわいいなぁ」と思って見つけた雑貨が、すごく遠い国とか、この先もおよそ行く予定がない国とかでつくられていると、なんだか不思議で、すごく大事な出会いをしたような気がしてくるんですよね。

海外旅行に行くのは、なかなか勇気もエネルギーも必要。子どものこともあって、なかなか行けていません。だからEtsyを見て、時には買い物して、地球の裏からやってくるエア小包の切手にキュンとなったりするのが、ちょっと非日常的で面白いなと思っています。

そんなわけで、私がEtsyで見つけた「あれ? この国、こういう文化が…?」みたいな発見を、いくつか紹介したいと思います。vol.1と書きましたが、2,3と続かなかったらごめんなさい…w

 

■ リトアニアのニットとリネン

 

バルト三国のうちのひとつ、リトアニア。ニットのファッション雑貨を探していると、リトアニアのショップがとても多いことに気づきました。リトアニアは夏も涼しく、冬めっちゃくちゃ寒いらしい。10月の時点で既に気温が10度とか。バルト三国では、あたたかなニットのハンドメイドが昔から盛んなようです。

 

 

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Owl mittens men's mittens black and white wool by orintadesign

 

デザインの幅がひろくて、中には遊び心のある、動物とか植物のモチーフもあります。

 

Red knit gloves - mittens knitted arm warmers - red white women accessories - winter knitting snowflakes Scandinavian patterned gloves gift

Red knit gloves mittens knitted arm warmers red by JolantaKnit

 

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Set of felt shoes and leg warmers woolen leg by WoolenClogs

ミトンじゃないんだけど、こういうニットとフェルト靴のセットとかも売っている。

「あたたかさに本気です」みたいな感じが伝わってくる……

 

Etsyで、「リトアニア knit 」とかで検索してみてください。国名は日本語でも検索できます。送料とか、発送までにかかる日数とかは、最近かなり翻訳が進んでいて、日本語で読めることが多いです。そこまで大きくないものなら、ヨーロッパだし1000円くらいかな? 送料。もっとかかるかな?? 家族の分ぜんぶ買うとか、「遠くから届く」という体験そのものを買っているのである! という気持ちがあれば、そんなに高く感じません。お支払いはクレジット、あとpaypalとか使えます。

 

リトアニアはリネンも有名みたい! 涼しい季節にはリトアニアのリネンを探してみるのはいかがでしょう。

 

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Traditional full linen apron in denim colour by notPERFECTLINEN

 

■ メキシコのオトミ刺繍

 

また布モノなのですが、こんどは冬でもあったかいメキシコです。

 

OTOMI PILLOW COVER - Multi Colour - Ready to Ship

OTOMI PILLOW COVER Multi Colour Ready to Ship by YucuNinu

これも、なんとなく Etsyを見ていて見つけたのですが、メキシコの先住民族であるオトミ族の刺繍です(テナンゴ刺繍とも言われる)。

テナンゴ村は「岩と岩の間」という意味らしく、もうホントに山奥らしい。伝統の柄には鳥とか馬とかが描かれていて、きっと村の風景だったり、収穫にまつわるものだったりするのかな。エルメスがスカーフの柄に選んだこともあったんだとか。

 

すごく商売が進んでる刺繍、ってわけでもなさそうなので、高いし、あんまりお店もないのだけど、見ているだけでも楽しいです。いかにもメキシコらしい色使い。

 

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Colorful Otomi Throw Pillow Cover Boho/Ethnic by PatternBehavior

 

オトミの柄をオリジナルで起こしたデザイン、とかなら、そんなに高くなく買える。

 

 

 

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SOLD But made to Order Multicolor Otomi fabric by ArteOtomi

ガチの、伝統のオトミ作品はこういう感じなのね! すごい! made to order だそうですよ。3ヶ月かかるって!

 

 

Mi FRIDA Adorable #Otomi GIRLS dress embroidered by indigenous women from Mexico

Mi FRIDA Adorable Otomi GIRLS dress embroidered by by ArteOtomi

 

かわいい。みなさんもチェックしてみてください、オトミ刺繍。

 

いかがでしたか。すこしは旅の気分に浸れたでしょうか?

ロシアの絵葉書を買ったら、そのビンテージのお店が、毎年ステキなクリスマスカードを、ぶっきらぼうに(特にメッセージとかなくハガキが袋に入ってるだけ)送ってくれるようになりました。各国の言葉で挨拶書くの大変だものね…w でも、そんなオマケもついてくるお買い物、なかなか楽しいですよ。

 

またEtsyで「この国は…!」「こっ、このカルチャーは…!」みたいな発見があったら、vol.2を書こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

保存

保存

宇多田ヒカルさんの「Fantôme」と、母のこと

 6年間の「人間活動」を終えて、戻ってきた宇多田ヒカルさんの新しいアルバム「Fantôme」を聴きました。私はもともと彼女の熱心なファン、というわけではないのですが、このアルバムに関しては、とても素晴らしいと思いましたし、強く心を揺さぶられました。

それは、「花束を君に」という曲だけでなく、他にも、明らかにお母様の死が影響を与えているなという曲があったためです。私は、2013年に母を亡くしており、曲のいくつかが「ほんとうによくわかる」と思いました。

もうひとつ共通点があり、母親の死と前後するようにお子さんが生まれていることです。母を看取る時に、私のお腹の中には次男がいました。宇多田さんは「SONGS」(NHKの歌番組、2016年9月放映)という番組で、「母の死後、もし子どもが産まれていなかったら、また歌おうという気になれなかったかもしれない」というような趣旨のことを言っていました。死と生の両方を一気に味わう時間というのはあまりにも濃密で、凡人の私ですら詩が書けそうだったのに、宇多田さんのような才能の持ち主だと、これは歌をつくるしかないな、という心持ちになったことでしょう。「歌」「音楽」「詩」というような、なにかしらの表現に昇華することで、感情を自分の心から切り離し、起きていることを少し客観的に見つめられるようになります。曲をつくることにも、そういう効果があったのではと思います。

 

あくまで私の解釈なので、勘違いも含まれるかもしれませんが、心に残ったいくつかの歌詞について、感想や、個人的な母との思い出などを書こうと思います。

 

 

「花束を君に」

 

朝ドラ「とと姉ちゃん」の主題歌だったので、ご存知の方も多い曲だと思います。「薄化粧」「花束を贈る」というのはそれぞれ、死化粧(亡くなったのが女性だと、葬儀屋さんとか病院の看護師さんがやってくれたりする)と、棺に入れるお花(葬儀場で位牌のまわりに飾ってあるお花は、最後に棺にめいっぱい入れるので)のことだと思います。つまりこれは、お葬式の日のことを歌った歌ですね。曲調が、静かだけど明るく、弦楽器が伴奏していたりもするので、セレモニー感があるというか、教会で聴くレクイエムみたいだなと思いました。

 

 毎日の人知れぬ苦労や淋しみも無く
 ただ楽しいことばかりだったら
 愛なんて知らずに済んだのにな

 

 抱きしめてよ、たった一度 さよならの前に

 

自分のことばっかりな20代を終えて、ようやく親が老いてきていることや、職場に先輩より後輩の方が多い、などに気づくのが30代。そんな最中に母親を亡くして、「まだちっとも親孝行していないのに。してもらうばっかりで、私は母親のために何をしてあげられたんだろう……」当時の私は、そんなことばかり思っていました。

しかし、そうやって悲しみに暮れつつも赤ちゃんを育てていると、赤ちゃんに感じる気持ちは「いてくれるだけで嬉しい」だったりしました。私もこうして、母のことを「私がいるだけで幸せ」にしていた時期があったのだろう。赤ちゃんは、いつの時代も赤ちゃんだから、それは確信できました。「知らずに親孝行してたんだ」と、ちょっとだけ自分を許せたりしました。夜泣きがあったり授乳があったり、育児は毎日大変で、それでまた当時の母の苦労に思いを馳せたりする。でも…きっと、無条件に愛されていただろう。

なんとなくそんなことを、ここの歌詞から感じました。

 

一方で「どうしてこんなに早く逝ってしまうの。友達の親はまだ全然、元気なのに。私だって『おかあさん』に甘えたいような辛い時も、まだまだあるのに」という気持ちもありました。抱きしめてよ、という歌詞は明らかに娘の立場から言っています。

亡くなってしまうと、もう二度と、触ることができないので、「抱きしめる」でも「抱きしめられる」でも、どっちでもいいからしておけば良かったな。子どもの頃ならしていたんだけど。大人になると、手をつなぐことすらしなくなるもんな。今でもそれは、小さな後悔として残っています。

 

 世界中が雨の日も 君の笑顔が僕の太陽だったよ

 

ほんとうに笑顔が素敵なお母様だったんだろうなと思います。私の母は、闘病生活の終わりの頃は、どんどん笑わなくなっていきました。長電話して爆笑していた母の姿が懐かしいです。「イヒヒヒ」とか、変な笑い方していましたけどね。

 

 

 

「真夏の通り雨」

 

 

「花束を君に」は、ちょっと無理してでも笑顔で見送りたいのだ、というような曲なのですが、実際に葬儀の直後にそこまで気持ちに整理がつくかというと、けっこう難しい気がする。私は割と、むしゃくしゃした顔(?)で遺影を運んでいました。しかも、宇多田さんの場合は、家族がゆっくりと覚悟を決める時間もなく、とつぜん失ったという感じだったかもしれません。

だから、もしかして時系列でいうと、強い喪失感を感じるこの歌の方が、先につくられていたかもしれない、と思いました。「真夏の通り雨→花束を君に→道」の順番で。まあ、つくられた順番なんか、どうでもいいことなのですが。

 

 夢の途中で目を覚まし 瞼閉じても眠れない

 思い出たちがふいに私を 乱暴に掴んで離さない

 

恋人と別れてしばらくの間もそうかもしれませんが、「何を見てもあの人を思い出す」という時期がある。SONGSで彼女もそう言っていました。「見るもののすべてに母を見てしまう頃があった」と。たとえば「一度だけ待ち合わせしたベンチ」とか、「好物だった安いチョコレート」とか、そういうものを目にするだけでいちいち心をかき乱されてしまう。

私がいちばん辛かったのは「母の日」かもしれません。プレゼントを贈り忘れるとか、かろうじて贈ったとかでなく、「贈る相手がこの世にいなくなった」母の日は、初めての体験です。やっぱり、寂しかったですね。だから、仏壇みたいなものって必要なんだなと思いました。亡くなってても贈り物したい相手っているから。

時事ネタで他愛もない話ができるとか、そんなことが幸せなんだと知りました。今だったらきっと私、「真田丸」の話とかするんだろうと思います。大事な人と真田丸の話とか、しておいた方がいいですよ。皆さんも(?)。

「自由になる自由がある」という歌詞がありますが、ニコニコしたり、考えずにいたりすることに罪悪感を持つ日々ってあると思う。「早く、平穏な日常に戻りたい」と思う一方で、「日常に戻ったら、母のことを忘れてしまうんじゃないか。それは、可哀想なことなんじゃないか」とも思ってしまう。

大切な人の死をなかなか咀嚼できない、どうやって悲しみを癒したらいいのか、癒していいのかもわからない。そんな風に「自分で自分の気持ちの自由を縛る」時というのが、確かにあると思いました。

この曲がアルバムの中で影のような存在で、他の曲に光が見える。悲しい曲だけど、それでも聴いていると癒されてきます。

 

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「道」

 

この曲がアルバムの一曲目にあるのはとても象徴的で、力強さとか、彼女が生きていく上での覚悟を感じます。「真夏の通り雨」は、過去へ引き戻されるような心情を歌っているのに対し、この曲は未来のことを歌っています。

 

 消えない星が私の胸に輝き出す

 悲しい歌もいつか懐かしい歌になる

 

時間が経って、私もやっと、母が「いない」とはどういうことなのか、分かってきました。ありきたりな言葉ですが、「心の中にいる限り、その人は生きている」は本当のことなのだと思います。

母がいない世界に自分はピンピンして生きている、という事実に、最初は驚きと、ちょっとした恐怖(パラレルワールドに生きているような恐怖?)も感じましたが、一方で、子どもたちが日に日に大きくなっていく姿を見ると、「まあ、交代していくのは自然の摂理か」とも思えるようになりました。

 

 人生の岐路に立つ標識は

 在りゃせぬ

 

「物事には事実と解釈があるだけ」とはよく言いますが、誰かの死は単なる事実で、それをどう捉えて生きていくかは、遺された人次第です。この歌をつくった時点で宇多田さんは既に「母親の死に泣き暮らして後悔ばかりして立ち止まっている、そんなのは嫌だな」と思えていたのかもしれません。小さな赤ちゃんの、はじまったばかりの人生が、涙色ばかりに彩られていたら、さすがに悲しいですもんね。

赤ちゃんにはほとんど過去がなく、ただ未来だけがある。忘れていた「未来を楽しみにする気持ち」が、帰ってきたのかもしれません。

 

 私の心の中にあなたがいる

 いつ如何なる時も

 一人で歩まねばならぬ道でも

 あなたの声が聞こえる

 

「こんな時、母ならどうするかな」「なんて言うだろう」と、私は今もときどき思います。なにかをきっかけに母を思い出すのも、辛いことではなくなりました。ずっと考え続けていることだけが「忘れない」じゃない。「いる」ということは、目に見えるかどうか、はあまり関係がないんだ。ということも知りました。

心の中に、見える景色の一つひとつに、母の「気配(Fantôme)」を感じる。

自分が死んでからも、遠くにときどき光る星のように、子どもの心を守ることができるとしたら、それは親冥利に尽きるなあと思ったりします。まあ、私がそこまで、良いお母さんになれているか? という問題はありますけれど。

 

「真夏の通り雨」に「勝てぬ戦に息切らし」という歌詞があります。私も、母には一生敵わないとよく思います。彼女はいつも周囲に人が集まり、頼られていました。意志が強く、自分で自分の人生を切り開く力がある人でした。一方で、母は教員だったのですが、通信制の高校に、自らの希望で長く勤務していました。その方が子育てしやすかったのに加え、「通信制には本当にいろんな生徒がいる。止むを得ず、社会的に『弱い立場』に置かれてしまう人もたくさんいる場所だから」という理由を聞いたことがあります。だから母は、自分が強くても、弱い人、望んでいないのに弱い立場に置かれてしまった人の気持ちも、よくわかる人でした。そんな母に私は「お前は正論に過ぎる」とたしなめられたこともあります。

仕事人であることも、いち母親であることにも、誇りを持っていた母でした。母に反発して選んだような物事もたくさんあったのに、振り返ってみると、結局は母の真似をしているだけのような気もします。

 

 

確かにわかることは、宇多田さんにとってお母様はほんとうに偉大で、たくさんのものを彼女に教えてくれ、もはや「自分の一部」のような存在だということです。「もし同い年だったら、私たちはきっと仲良くなれただろう」そんな母親を持てたのはとても幸福なことだと思います。早くして亡くしてしまったとはいえ、宇多田さんとお母様の関係はこれから先もずっと、代えが効かない、唯一無二のものであり続けるのでしょう。

亡くなってしまったことで、その存在はどんどん大きなものになっていくだろうな、とも思います。でも別に、「超える」必要もないですよね。宇多田さんはお母様が生きた時代の「次の時代」、唯一無二の今を生きているんだから。

 

 

 

ちなみにFantômeには他にもたくさん良い曲があって、いろんな人のいろんなシチュエーションのいろんな気持ちが浮かんでくる。切ないだけじゃなくて、キュートなのもエロいのもある…気がする。ちなみに復帰後の、以前よりまろやかに、よりハスキーになった歌声が、大人っぽくて私は好きです。もともと、「明るい歌を歌っても切なく聞こえる」と言われたりするらしいですが、優しさや余裕と、憂いを両方とも感じる声で、あー、歳とるっていいなあ。と思ったのでした。

 

ご本人のサイトの「ヒカルパイセンに聞け!」という質問コーナーで、「どうして歌手になったんですか?」という質問に「家業を継いだんだぜ。」と答えていた宇多田さん、なんという可愛らしい天才かよ。と思います。ちなみに別の質問に、こんな回答がありました。

 

 

ヒカルパイセンにとって、芸術とは?何だと思いますか?

 

経験は人それぞれで、どんなにそっくりな体験をしたとしても二人の人間が同じ経験をすることはあり得ない。
けど俺が感じるどんな感情も、人類初めての感情なわけがない。それが疎外感や孤独だったとしても、沢山の先人が同じ気持ちを味わったはず。今だって意外に身近なところで誰かが同じことを感じてるかもしれない。きっと誰かがもう、その気持ちを詩にしてる。小説にしてる。踊りにしてる。絵にしてる。歌にしてる。
それが俺にとっての芸術。

 

 

これを読んで、そっか。私も、迷うけど、ちょっと辛いけど、感想を書いてみようか。と思ったのでした。

 

 

母とのことを文章にするきっかけを与えてくれて、ありがとうという気持ちです。

いちファンとして、宇多田さんの未来がとっても楽しみです。

 

 

 

 

 

<リンク集>

 

いま、radikoで、配信後にもラジオが聴ける「シェアラジオ」の特別番組として、宇多田さんの番組をやっています。本人の解説つきで新曲が聴けるのでオススメです。17日で終わってしまうようです。最後にお母様の曲もかかりますよ。

radikoのアプリをDLすると、聴けるようになります)

shareradio.jp

曲の歌詞の一部は、こちらの公式HPで見られます。

宇多田ヒカル 「Fantôme」歌詞特設ページ

 

音楽性のすばらしさについては、このレビューなども。

気配がもたらす孤独と熱狂—インディーバンド的宇多田ヒカル「Fantôme」論 by bed 山口 - LIVEAGE

 

 

Fantôme

Fantôme

 

 

 

好きな絵本と児童書の紹介とかしちゃいます

 これまで、思いついた時や読後「良かったー!」と感じた時に、Twitterでは流してきたのですが、それじゃどこにもストックされないので、たまにはこういう記事も書いてみようと思いました「絵本のおすすめ」。

これからお父さんお母さんになるよという方や、誰かに絵本の贈り物をするよ、という方にお伝えしたいのは、「はらぺこあおむし」とか「いないいないばあ」とか「ぐりとぐら」とか「はじめてのおつかい」とか「からすのパンやさん」とかとかとか… すごく有名な絵本ありますよね。あれ全部、鉄板で良いですから。間違いない。そこまで有名だということは、どの時代の子どもたちの心も鷲掴みにしてきた、ということなので。だからまずは鉄板のやつを入手するのが良いと思います。以下の紹介は、それ前提で、完全に私の好みです。「もうちょっと絵本ほしいな」という時や、「図書館で何借りよう」という時などに、参考にしてもらえればと思います。

 

■ 自由なきもち

 

チョコレートパン (幼児絵本シリーズ)

チョコレートパン (幼児絵本シリーズ)

 

 ぺージをめくる度に超展開(長展開?)が起こる長新太さんの絵本。この世界にいつか入り込んでみたい…このぐらいの破天荒さが子どもにはちょうどいいような気がします。彼の本ならどれも「マジか…」という展開になるためハズレがありません。中でも「チョコレートパン」かなり好き。

 

こんなことってあるかしら? (おはなし広場)

こんなことってあるかしら? (おはなし広場)

 
ぼくのくれよん (講談社の創作絵本)

ぼくのくれよん (講談社の創作絵本)

 

 

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「こんなことってあるかしら?」の1ページ。

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あとがきで、絵と文を書いた自分で自分を紹介するという謎展開w

 

基本、文字は少なめなので、2〜3歳ぐらいから楽しめるんじゃないでしょうか? 実はもう亡くなっている長新太さん。でも絵本を読んでいる限り、いつもそばにいるような感じがする不思議…。

 

きみのせかいはどんないろ?

きみのせかいはどんないろ?

 

 絵が好き、という兆候があるお子さんがいたら、読んでみてあげてほしい本です。自由にのびのび、ほかの子の目も気にせずに絵を描き続けるのって、実はすごく難しいと思います。どこかで、周囲の真似をするようになってしまったり、「変」って言われるのを恐れて、無難に描こうとしたりするから。

内容はシンプルで文字も少ないので、3歳ぐらから読めると思います。(しかしamazonでは、レアなのかすごく高い金額になっちゃってるので、どこか別のshopで探してみてください)

 

 

■ 想像力!安野光雅さん

 

あけるな

あけるな

 

一時絶版になっていたようですが「復刊ドットコム」から出ていました。小さい頃に、私が住んでいた団地の集会所にこの絵本が置いてありました。「集会所」という自分にとっての異世界と、言葉少なでちょっとひんやりする世界観が心に刻まれて、忘れられない読書体験となりました。いま読んでも、どこか違う世界に連れていかれそうな気持ちになります。これも字は少ないので、3歳くらいから? ファンタジックな世界が好きな方におすすめです。(あえて中身は見せません!もったいないので。買って見てみてください)

 

もりのえほん

もりのえほん

 

もりの中から動物を探す本なのですが、ほんとにどこにいるか分かりにくいところがおすすめです。でもさ、森ってそういう不気味なところありますよね。字はありませんよ。

 

あいうえおの本

あいうえおの本

 

 50音と、絵がセットになっている本です。絵柄も挿絵のセレクトもすごいオリジナリティ。↓このページは「こ」だから「こおり」の絵ですね。よーく見ると、縁取りにもたくさん「こ」がつく花や動物が隠れているんですよ。これは長男が50音に興味を持ち始めた頃に買いました。

 

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にほんご

にほんご

 

ちいさな物語とか詩が…載っている本です。日本語のおもしろさを感じられる本なので、5歳ぐらい〜小学校低学年におすすめです。これ、「小学校一年生の国語の教科書を、勝手につくってみた」という本らしい。安野光雅谷川俊太郎大岡信…のメンツで。なんだか挑戦的な本だったんですねえ。
私は小さい頃に読んで、「るるり」「りりり」みたいな言葉が並んでいるだけのページ(※詩です。草野心平さんかな)が、なんとなく忘れられません。

 

 

 ■ インテリアの一部として飾りたい(親が)

 

きりのなかのサーカス

きりのなかのサーカス

 

 「霧」がトレーシングペーパーを重ねることで表現されている。その渋さが子どもに伝わるかは未知数ですが、やたらオシャレです。文字は少なめ。

 

Bruno Munari's ABC

Bruno Munari's ABC

 

シャレオツ。TSUTAYA代官山とかに売ってそう

 

BABY NUMBER BOOK

BABY NUMBER BOOK

 

 リサ・ラーソンの娘さんがお母さんと一緒につくった本みたいです。独特の絵柄の猫やライオンなどで数をかぞえる本です。1歳〜に。手のひらサイズのかわいい本です。

 

 

■ 電車・車・メカニック

 

新幹線のたび ~はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断~ (講談社の創作絵本)

新幹線のたび ~はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断~ (講談社の創作絵本)

 

北海道から出発して、九州まで、新幹線だけで移動する。けっこう高い位置からドローン空撮してるような視点(?)で、イラストがめっちゃ細かく描き込まれています。はやぶさやさくらの停車駅まで覚え始めたよ…という子にはたまらない一冊。字はほとんどないですが、ほぼ「地図」なので、3、4歳〜くらいかな。富士山の横を通るところ、やっぱり特別な感じです。

 

特大地図がついているのもあるらしい!

 

バスがきた (五味太郎の絵本)

バスがきた (五味太郎の絵本)

 

別にこの本じゃなくてもいいんですが、バスや電車がやってきては去っていく、という繰り返しの話が子どもは好きだったりしますよね。 この本も街のいろんなところに「バスがきた」というだけの本なのですが、背景の景色がとても美しいので私は好きです。最後のページ、どこに停まるのかな? というあたりも。

 

かさもって おむかえ(こどものとも絵本)

かさもって おむかえ(こどものとも絵本)

 

 これも私が小さいころに読んでいた本なのですが、電車で帰ってくるお父さんを駅までお迎えにいくと、そこで不思議な猫に出会います…という話。子どものころって、バスや電車の駅まで親をお迎えにいくだけでも大冒険じゃなかったですか? 最寄駅より先は見知らぬ世界…の子どもだからこそ、ドキドキできるお話 だと思います。絵は長新太さんですよ。

 

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ぼくがとぶ

ぼくがとぶ

 

 村上春樹作品の表紙でも有名な佐々木マキさん、絵本も描かれているのですね。この「ぼくがとぶ」は、自分で飛行機をつくってよーし飛んでいくぞーってそれだけの話なのですが、飛行機の部品がものすごく細かく描かれているのでなんとなく目が離せません。ぼくが飛んでいく先もなかなか、すごいですよ。

 

 

■ ギミックが効いているぞ

 

パパ、お月さまとって!

パパ、お月さまとって!

 

 とちゅうのページが上にバーンって開いて、迫力のある展開が楽しめます、みたいなやつ。子どもってそういうの好きでしょ? どちらも絵がとてもキレイです。

 

こんにちは おてがみです

こんにちは おてがみです

 
こんにちは また おてがみです (福音館の単行本)

こんにちは また おてがみです (福音館の単行本)

 

 絵本がただ単に手紙の形になっている、そういうギミックが私は小さいころすごく好きだったのですね。これはいろんな絵本の主人公から、お手紙が来るというシンプルなものですが、「わざわざ封筒に入っている」というところが子どもには嬉しいんじゃないでしょうか。何回も封筒に入れたり出したり。それにしても、ぐりとぐらからお手紙が来るのってうれしいですよね。

 

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あの「とん ことり」のかなえちゃんからのお手紙も!

 

魔女からの手紙

魔女からの手紙

 

 こういうのもあった。

 

 

■ 美意識の高いお子さまに

 

わたしのワンピース

わたしのワンピース

 

 まっしろなワンピースで草原を歩くと、草の実模様のワンピースに… というのは、今でも「本当にそうなったらいいのになぁ」と思わせる力があります。

 

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チリとチリリ

チリとチリリ

 

絵が。綺麗。シリーズで何冊もありますが、本当はぜんぶ揃えたい。

 

チリとチリリちかのおはなし

チリとチリリちかのおはなし

 
チリとチリリゆきのひのおはなし

チリとチリリゆきのひのおはなし

 

 

こういうところでぜひ、中の絵を見てみてください。

【シリーズ】 『チリとチリリ』 | 絵本ナビ

 

 

だるまちゃんととらのこちゃん (こどものとも傑作集)

だるまちゃんととらのこちゃん (こどものとも傑作集)

 

 だるまちゃんシリーズはぜんぶ良いんですが、中でもこれは途中、街中にキレイな色の泥で絵を描きまくるシーンがあって、かなり丁寧に描き込まれているので、そこが大好きです。

 

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ところで、かこさとしさんの「からすのパンやさん」に最近、続編が出たのご存知でしたか?あの「おもちちゃん」とか名前がついていた、からすの子供たちが、おかしやさんとかそばやさんとか、お店を立ち上げるという、親子二代起業家スピリットあふれる展開になっております。

 

『からすのパンやさん』40年ぶりのつづきのおはなしが4巻登場! | 偕成社

 

 

 

■ ジェダイ英才教育

 

ダース・ヴェイダーとルーク(4才)

ダース・ヴェイダーとルーク(4才)

 

 もしダースベイダーが、ルークの幼少期にイクメンだったら…みたいな薄い本(二次創作)です。でもルーカスフィルム公認だからこれ!

 うちの子はスターウォーズ観る前にこれ読んじゃったので、壮大なネタバレ済という感じではあったのですがw けっこうハイコンなので本当に面白がれるのは大人かなという気がします。

ただスターウォーズがまだわからん、という幼児でも、宇宙人がたくさんいたり、ロケットやらロボットやら出てくるので(もちろんイウォークとかR2D2とか出てくる)、なんだか気になるみたいですよ。繰り返し「読んで」って言われました。「4才」って書いてあるし、4才くらいで読むとちょうどいいかもね。内容はほぼ一コマ漫画です。

 

 

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イウォーク!

 

ダース・ヴェイダー絵本シリーズ(3冊セット)

ダース・ヴェイダー絵本シリーズ(3冊セット)

 

 レイア編も出ているし、続編いろいろあるみたいですね。

 

 

 

 

■ 年長さん〜の「字多めの読み聞かせ」に(舞台は保育園)

 

年長ぐらいになると、ちょっと文章が長め・多めの本も理解できるようになってきますよね。何を読んであげたらいいんだろ? って迷った時期でもありました。保育園から教えてもらった本も含まれているせいか、たまたまぜんぶ舞台が保育園だった。

 

おしいれのぼうけん (絵本ぼくたちこどもだ 1)

おしいれのぼうけん (絵本ぼくたちこどもだ 1)

 

 大人になってあらためて読むと、よくできているなあ…という本でした。これはワクワクするわ。書いた人たちの童心、子ども目線に感心しちゃいます。保育園のお昼寝の時間に悪ふざけをして、押入れに閉じ込められてしまった二人の冒険! のお話です。いま押入れに子どもとじ込めたりしたら問題になると思いますけどねw

 字は多いのですが、絵もとても良いので、ときどき絵を見せてあげながら読むと良いと思います。

 

 

いやいやえん (福音館創作童話シリーズ)

いやいやえん (福音館創作童話シリーズ)

 

 宮さん(宮崎駿)が絶賛したことで知られる(知られてない…?)本。何が良いって「まったく教訓的でない」ところが良いですよね。「いやいや」と言ったからってなにか懲罰がくだるとか、そういうことは一切ないところ。「この子(しげる)の親だったら大変だろうな…」とは感じるのですがw そういうしげるのマイペースさは気持ちがよいものです。
この本の中に「くじらとり」という話が載っているのですが、これがシンプルだけどなかなかない素晴らしさです。中川さんはかつて保育士さんだったのですが、きっと「ごっこ遊び」をする子どもたちを見て思いついたんだろうなあ〜と思います。「くじらとり」は私だけでなく宮さんの心も鷲掴みにしたらしく、ジブリ美術館で映画も観られるみたいですよ。

 

ちいさいモモちゃん (講談社文庫)

ちいさいモモちゃん (講談社文庫)

 

 すごく有名なのであらためて紹介するのもアレなのですが、保育園で子どもが読んでもらっていたので。主人公は女の子ですが、女の子でなくてもお話に引き込まれているようです。また、一巻ではモモちゃんはまだ乳児といえる小ささなのですが、年長さんぐらいだと「お世話してあげたい」ちいさな妹のように感じて、気になるみたい。と保育士さんが言ってました。子どもの成長ってすごいですね、そんなことをお話に感じるようになるなんて。。

モモちゃんは保育園に行くのですが、私にしてみると保育園は「つれていく場所」なので、モモちゃんが主体的に保育園に行く姿はなんとなく新鮮なのでした。テーマ・物語展開だけでなく、子どもたちを取り巻く景色の描写など細部まで、とても優れた美しい文章で書かれていると思います。

 

 

■ なかなか本を読まない男児に

 

ジェンダー規範の影響があるんだかないんだか、本を読みたがらない男児っていますよね。うちの長男も、あんまり本が好きじゃなくて。でも、おもしろい体験できるんだよーというのを伝えたくて、うまくハマってくれたのが「はれぶたシリーズ」でした。私が小学生の頃に大流行していた、空からぶたが降ってくるアレです。

 

はれときどきぶた (あたらしい創作童話 13)

はれときどきぶた (あたらしい創作童話 13)

 
あしたぶたの日ぶたじかん (あたらしい創作童話)

あしたぶたの日ぶたじかん (あたらしい創作童話)

 

 めずらしく「もっと読んで!」となったので、シリーズを図書館で借りてみたり、中古で買ってみたり。あらかた読みましたが、やっぱり一番破壊力があって面白いのは、「はれときどきぶた」と「あしたぶたの日ぶた時間」ですね。バカバカしいように見えて、あとがきを読むと、作者が強い想いをこめて作品を書いていることがわかります。「きみんちにある新聞も、ほんとにぜんぶ『ほんと新聞』かな?」とか。もちろん女の子でも、ぶっ飛んだことが起きる話が好きな子にはオススメです。私も小さいころ大好きでした。読み聞かせるなら年長さん以上、自分で読むなら小学校低学年・中学年以上かな。

 

 

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あとがきがいつもロックな感じ

 

■ 大人の私が夢中に…児童書

 

二分間の冒険 (偕成社文庫)

二分間の冒険 (偕成社文庫)

 

 めっちゃ面白いです。読み聞かせている私が続きが知りたくなって大変でした。でも子どもにはちょっと難しかったみたい…小学校中学年〜くらいに、自分で読んだ方が面白いのかもしれません。主人公は放課後に、学校の保健室に向かう途中で、ふしぎな猫に出会います。あれ?ふしぎな猫に出会う話多くない…? ここでは「ダレカ」という名前の猫ね。そこからしばらく、まったく別世界で旅をすることになるのですが…

これも「君の勇気と友情が、龍を倒す力なのです」みたいなよくある感じにまとめようとしないところが良いです。それよりもスリルとか、先を読み進めたくなるワクワク感が優先されています。岡田淳さんは学校の先生をしながら児童文学を書かれてたみたいで、学校を舞台にふしぎなことが起こる話が多いですが、私はすっかりファンです。

 

 

新訳 赤毛のアン (集英社みらい文庫)

新訳 赤毛のアン (集英社みらい文庫)

 

 恥ずかしながら私が小さい頃は、赤毛のアンって読んだことがありませんでした。「花子とアン」をきっかけに、読んでみようかなと思ったのですが、ちょうどその頃に羽海野チカさん表紙の新装版が出たので良かったです。子どもに読み聞かせもしました。でもまあやっぱり、女の子の方が読んで楽しい話なんじゃないかと思います。(対象年齢は、小学校中学年〜になっています)

アンの魅力って何なんでしょうね。作者も「アンの魅力って何なんだろう」なんて思いながら書いているような感じがしました。でもやっぱり一番は、「規範から自由」というところなんじゃないかな。女の子はおしとやかに、親の教えを守って嫁入り修行をしていればいい…みたいな常識の、ことごとく逆を行く人なので。なにか素晴らしいものを見た時聞いた時に、目がキラキラして感嘆の声を漏らし、喜びを隠せないアンを、農業一筋・控えめな性格の独身男性マシュウがおおらかな愛で見守る姿…とか、なんだか色々と考えさせられてしまいます。

アンは先生を目指すのですが、当時、女性が仕事をしようと思ったら、教師ぐらいしかなかったのかな…。まあとにかく、朝ドラ女子や宮崎アニメ女子などのすべての元ネタになっている人この人でしょう!!という全部盛り感がある"anne"なのでした。

 

 

■ おじいちゃんおばあちゃんにおねだりしよう!絵本の定期購読

 

月一冊とか、定期的に絵本が送られてくるサービスがあるの知ってますか?私は一時期、親がこのサービスで子どもに本を贈ってくれてて、ここに紹介したものも一部そこに含まれています。

 

・絵本naviの「絵本クラブ」

【とくダネ!で紹介】絵本ナビの定期購読サービス 絵本クラブ | 絵本ナビが厳選した絵本を毎月お届けするブッククラブ(定期購読サービス)

冒頭でも書いたような「鉄板」絵本が確実に届く&ここ最近の人気絵本もキッチリ含まれているという印象。日本人の作家が比較的多い感じ。

 

 

福音館書店の「こどものとも

福音館書店|月刊誌のご案内

薄〜いオリジナルの絵本が毎月届く。毎月新しいおはなし&薄いから年間購読しても安いのが特徴である気が。過去、ここからたくさんの名作が生まれたんだと思います。 保育園とかにもよく置いてありますね。

 

・クレヨンハウスの「ブッククラブ」

クレヨンハウス-ブッククラブとは|あかちゃんギフト、絵本・木のおもちゃ・オーガニックのクレヨンハウス

うちはこれ使っていました。特徴としては定番がキッチリ来るのに加えて、クレヨンハウスオリジナルの絵本や外国の作品がちょっと多めに来る気がします。セレクトも面白いので私は好きでした。クレヨンハウス、思想的にはちょっとあの、極端では…と思うところもありますが!ブッククラブは良い感じでしたよ〜

 

 

 既に持っている本がある場合、本の入れ替えができるサービスもあるようです。もちろん期間も選べますし、詳しく調べて決めてみてね。「出産祝い、なにがいいかね…五月人形でも贈ろうか」なんて言われたら、「いえお義父様、本がいいです(`・ω・´)キリッ」とか答えてみてはいかがでしょう!

 

 

日本ってほんとに絵本が豊富で充実している国ですよね。今回は、さいきん出た本をあまり紹介していないのですが、今もなお素晴らしい絵本がどんどん生まれていると思います。子どもが小学校中学年〜高学年になると、また別の本との出会いがあるのだろうと思います。いずれそのあたりも書けたらいいな!

 

 

 

「働くマザーのストレス調査報告書」を読みました

 年末に後輩が「おもしろい調査を見つけたので共有します」とメールをくれました。それがリクルートワークス研究所の「働くマザーのストレス調査報告書」でした。昨年の10月にリリースされたものです。Twitterに流したら反響が大きかったので、忙しいお父さんお母さんでもザックリ概要をつかめるよう、要約&私の感想を簡単に記事にしてみようと思いました。

 

《プレスリリース》

リクルートワークス研究所がストレス調査を実施 仕事・プライベート両面から育児中のストレスを分析 | リクルートホールディングス - Recruit Holdings

 

《報告書》

http://www.works-i.com/pdf/151009_stress.pdf

 

(PDFで30Pあります)

 

この調査の最たるポイントは、ワーキングマザーが感じる「ストレスの把握」において、「仕事だけでなくプライベートも」含めて調査の対象とした部分だと思います。

労働者のストレスチェックに関しては、法律でも義務付けられたようですし、様々な例がありますが、プライベートも含めたチェックというのはあまり存在しないようです。そこに問題意識を持って実施されたのがこの調査ということです。

 

「特に働くマザーにおいては、プライベートでのストレスが様々に存在し、そのストレスが仕事へ影響を与えている可能性が大きいのではないか。これが、出産や子育てによる離職を増やしている要因になっていないか。 」(P.2)

 

当事者の私からすると「そりゃそうに決まってるじゃん」と思うのですが、だがしかし、こういった問いを立てられている&仮に薄々そう思っていたとしても、プライベートでのストレスまで踏み込んで解決をはかる、そんな企業がどれだけあるのか?というと疑問だなとも思いました。

 

この調査によって、ワーキングマザー独特のストレスの種類と強さを把握することで、「仕事への意欲や能力発揮を阻害する要因としてのストレスを顕在化」させ、「心身状態や活動へのストレスによる阻害状況を事前に把握」できるのではないかと考えた、と書いてあります。

つまり、この調査を最も活用できるのは、企業の人事部・管理職など、「ワーキングマザーを職場で活躍させたい」と考えている人たちではないでしょうか。もちろんマザー本人やその夫、マザー予備軍の人たちが知識として仕入れておいても、損はないと思います。ただ、調査の目的としては、「人事・マネジメントに活用してほしい」ということが第一義だと思いますので、調査はそれを念頭に置きつつ読んでいただけると幸いです。

ちなみに、ぜんぶで30P弱の調査報告書となっていますが、内容は平易な文体で、キャッチーな具体例も挙げられています。専門用語はあまり使わないで書かれており、読みやすいです。

 

 

■ ストレスが「強い」のは、配偶者(夫)に関する項目が多い

 

調査は大きく、「日常的なストレス(デイリーハッスル)」と「人生における大きな出来事のストレス(ライフイベント)」に分けて行われています。

 

まず、「日常的なストレス」の「強さ」ランキングは、P.7に載っています。

 

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ワーキングマザーが日々の中で「強いストレス」を感じる項目には、「配偶者の家事への非協力」や「保護者会やPTAなどの活動」など、プライベートの項目も含まれています。「(仕事で)急な休みがとりにくい」の項目と、「保護者会やPTAの活動」が同じくらいのストレス値で上位に食い込んでいます。「休めない、でも出なければならない」という、職場と学校の間で引き裂かれるような状態が強いストレスになっているのだろう、と想像できます。

 

続いて「ライフイベントのストレス」の「強さ」ランキングはP.8に載っています。

上位4つが「配偶者の失業、ギャンブル依存、DV、収入減」です。経験している人の割合はそこまで多くないですが、配偶者への期待値とそれを裏切られた時のストレスの強さがうかがえる結果です。

どちらの結果もですが、どうもワーキングマザーにとっては、夫の存在感がとても大きいのですね。夫との関係が良好であれば、ワーキングマザーのストレスはかなり少なくなる、ということかもしれません。

 

ちなみに「ライフイベントのストレス」の上位に、マザーもファザーも「不妊治療」が入っていることも見過ごせません。治療のために休みを取る必要があり、仕事にも影響の出ることなので、いっそうの理解や配慮がほしいところです。

 

ちなみに「働くファザー」のストレスは、そのほとんどが仕事に関することになっています。

(この「働くファザー」の調査結果を載せている意味が、私はちょっと疑問でした。ことあるごとに「一方、働くファザーは」と比較がなされているのですが、この人たちは必ずしも「共働きの夫」というサンプルではないようです。専業主婦家庭の夫も当然含まれているだろうから、たとえば「育児や家事に関するストレスが少ない(=そもそもほぼ担っていないので感じる機会も少ない)」というような結果は、当たり前のような気もします。ただ調査の中では、「こんなに夫は家事育児してない!」といったニュアンスで報告されている気がします。

もしかすると、ここに出てくる「働くファザー」=企業の中でのマジョリティということかもしれません。人事や管理職には、男性・とりわけ専業主婦の妻を持つ男性もまだまだ多いはずなので、その人たち、つまり「自分たち」と比較した場合のストレスの種類の違いに気づいてほしい、という意図なのでしょうか。

ただ、この掲載の仕方だと、「働くファザー」が何者なのか今ひとつハッキリせず、誤読を招く可能性があると思いました)

 

 

■ 人間関係や、子どものしつけなど、細かく多数のストレスを経験

 

「日常的なストレス」の「経験率」ランキング(経験した人が多い順)はP.9にあります。

 

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15位までがすべてプライベートの項目になってしまいました。私自身もこの上位15項目はすべて「体験したことがある」と思いました。

このストレスの内容って、「お母さん」が感じるものとしては当たり前なのかもしれません。でも、仕事をした上に、かつプライベートでも、近所や親戚の人間関係や家計のこと、子どものしつけ、生活、教育全般などについて、マザーたちがここまでストレスを感じながら暮らしているのかと思うと、やっぱりちょっと暗くなってしまいます。ファザーの調査結果に、「お弁当づくり」「家計の切り盛り」「子どもの整理整頓・片付け」「子どもの生活リズム」がまったく入っていないのにも、ちょっとショックを受けました。なんというか、性別役割分業をほぼなぞってるだけ、という感じの結果なので。

 

資生堂ショック」の報道で、女性が活躍する社会というのはつまり、男性やその女性を取り巻く周囲が、本人をサポートしなければ実現しないのだ、という事実がハッキリしたと思います。「お弁当づくり」「家計の切り盛り」「子どもの整理整頓・片付け」「子どもの生活リズム(を整える)」たとえばこのあたりを、ファザーが巻き取る、あるいはアウトソースするなどができれば、両立の妨げとなるストレスは大きく減りそうです。

 

 

■ 母親で抱え込まず、ファザー達に「意識して」あけ渡す

 

この結果から見えるように、「母親」は周囲から、子どもや親族にまつわる「人間関係」の維持を求められています。そして、そこに当人たちにとって「強めのストレス」が発生しています。

「小一の壁」の記事を書いたりしながら考えていたのですが、この「女・母親同士の人間関係」は、子どもが小学校に入ると、PTAなどを通してさらに強く求められるようになります。もちろん、「義務感から始まったママ友付き合いでしたが、今では最大の宝です」といったことも当然ありますし、「人間関係にストレスしかない」というわけではありません。けれど、ママ友ネットワークを(父親が「蚊帳の外だ」と感じるレベルで)強固にしすぎることによって、自分で自分の首を絞めている、ストレスを高めてしまっていることはないだろうか、とも思うのです。生き延びるためにママ友ネットワークがとても大事、それは分かる。でもお父さんたちにも、「意識して」明け渡す、彼らも人間関係の中に巻き込む、ということが大事じゃないかなと最近は考えています。

 

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ほかにも、いくつか注目したい項目がありました。

経験者は全体の4〜5%と少ないけれど、一年の間に「親との同居と別居」「子どもの病気による入院や手術」「雇用形態の変更」「配偶者の失業」「親の介護」などを経験している人がいる、という点。私も経験者ですが、こんなの、ギリギリまわしてる両立のバランスを一撃で吹き飛ばすストレスになり得ると思います! 人事部の方にはぜひ、こういった「小さな数値」まで見ておいて頂きたいと思います。

 

また、正規・非正規の別でストレス値を見た結果もあります。正社員と非正規社員マザーを比較した時に、差が大きい(非正規マザーの方がストレス値が高い)項目として、「離婚」「離婚の話し合い」「配偶者の家事・子育ての非協力」があるようです。雇用が安定しない状態だと、離婚した場合に経済的なダメージが大きいです。また非正規社員マザーの夫は、「家事や子育てを妻が担うのが当たり前と考える傾向があり、その夫へのストレスが大きいということか」(P.14)とも書いてありました。非正規社員だと仕事が楽、ということはあまりないのが現実なので、奥さんの方が給料が安いから家事育児は任せっきり、みたいなのは良くないと思いますけどね。

あと、意外に経験者が多かったのが「慢性的な睡眠不足」と「ダイエット」。朝は食事の用意から身支度までこなし、保育園まで自転車で子どもたちを送り、通勤電車にゆられて会社に着いたらノンストップで仕事、帰りはダッシュでお迎え、またノンストップで食事の支度、お風呂、寝かしつけ。疲れ切って毎日寝落ち、という方も多いのではないでしょうか。寝た方が翌日はラクだけど、ここで寝てしまうとまた「朝は」からの繰り返し、自分の時間が一切なくなるので、疲れていても無理して起きててみたり。家では子どもを追いかけてばかりで美容液をつける暇もない、とか。化粧ノリが悪い、なんかシワが増えたな、痩せにくくなったな、そういうのって、ジワジワとボディブローのようにストレスにつながりますよね。わかります、わかります。

しかし、この結果。それこそ資生堂さんに、こういった子育て世代の美容に関する悩み、なんとかしてほしいよー!と思いました。私たちの気持ちがわかる美容部員ママ、きっとたくさんいるんじゃないのかな?

 

 

 

■ これからは、「家族のこと」まで考慮したマネジメントが大切に

 

 

ワーキングマザーとして働くようになってから、それまでの何倍も、「プライベートのことを職場や上司に共有する必要性」を感じるようになりました。子供の病気や親の病気・介護など、「人生の中での大きな出来事(ライフイベント)」を共有する必要性も経験しました。

日本の会社においては、私生活を職場に持ち込むことをあまり良しとしない(「滅私奉公」というような)慣習があるのではないでしょうか。どうしてもプライベートを職場に共有せざるを得ない立場になってから、私はそういった慣習に疑問を持つようになりました。私はひとりの人間なので、「OFF」の生活に大きなストレスがあれば「ON」の私にある程度の影響を及ぼすのは当然のことなのに。

これからのマネジメントにおいては、たとえば妊娠・出産、不妊治療、親の介護など、社員の家族のことまで想像力を働かせ、必要な時に、適切な対応を取れる上司こそが、働くマザーをはじめとした従業員のパフォーマンス向上を実現できるのだろうなと思います。

 

 

 

 

調査「まとめ」となっている21P以降には、私たちワーキングマザー本人の意識改革を促すコメントもあります。ちょっと耳が痛いかもしれませんが、聞いておいた方が良さそうです。読んでみてください。