kobeniの日記

仕事・育児・目に見えない大切なものなどについて考えています。

「泣くのはやめなさい。男の子なんだから」

2年くらい前に、とある外資系企業の管理職をしている女性に話を聞いたことがある。彼女が指揮している、「女性社員の活躍を支援する取組み」についての話の中で、彼女はこんなことを言った。
 
「女性社員にも、なおすべき部分はあると思うんですよ。たとえばオフィスで泣いちゃうとかね」
 
私はガーーンとなってしまった。というのも、その前日に部長(かなりコワモテの男性)に「失望した!」と怒鳴られて、ぽろりと涙してしまっていたからだ。
というか、私は新人の頃からよく会社で泣いていた。そのほとんどは悔し泣きだ。叱られた時、相手の言うことがもっともすぎて泣けてきたり、結果が出なかった時に自分の不甲斐なさに涙したり。さすがにオフィスのど真ん中ではよくないと思い、トイレでこっそり泣いたりしていた。
 
そんな私が母親になったわけだが、時々思うことがある。
私はこの台詞を言うのだろうか。
 
 
「泣くのはやめなさい。男の子なんだから」
 

 

うまく怒れない
 
id:mangakoji 泣いてると、よく父親に「何泣いてるんだ、説明してみろ。説明できないなら泣くな。」と言われて泣き止んだ。

  
 
ちょっと古い増田から。元の増田の趣旨とは少しずれるかもしれないけれど、私はこのブコメが気になっていた。多くの男の子が、親たちから「泣く」ことを禁じられているのだろうか、と思った。
前述の部長のような人の前で、私が泣いてしまった理由を考えてみると、父親がものすごく草食系であったため、コワモテの男性に怒鳴られることに慣れていないのと、私は女なので、「女々しい」と言われることのある行為=泣くこと自体を叱責されることは、あまり無かったからかなあ、と思ったりする。
 
 
忍成修吾くんという俳優さんがいる。けっこう泣き虫で有名である。「世界ウルルン滞在記」で、フランスの「クリストフル社」に銀食器を創りに留学して、なかなか理想の物が創れず、工房の裏でウルルンしてしまっていた。(ちなみに工房の皆さんは、そんなシュウゴを温かく見守っていた。叱責する人はいなかった)私はそんな彼の、男性には珍しい素直さに萌えた(笑)。次の日、当時の上司(男性)にその話をしたら、
 
「そんな…気色悪い」
 
と一蹴されてしまった。
 
 

泣くのはいけないことだろうか。うちの息子は0歳だけど、泣いてばかりいる。彼はまだ言葉を持っていないから、「快」以外の感情はすべて「泣く」ことで表現される。しかも本人は、沸き上がる感情に対しほぼ条件反射的に泣いている。なぜ泣いているのか、本人さえあまり分かっていないように見える。子供って、はじめは、そんな風なのだ。だから、そこに言葉をつけて、悲しみの理由を述べたり、なぜ涙が出てきてしまうのか、自分で理解したりするには、けっこう時間がかかりそうだ。親の方にも、辛抱強さが必要だと思う。そこを「説明できないのか。なら泣くな」といったようにスキップするとどうなるかというと、
 
「泣くのは恥=悲しみを感じるのも恥」
 
子供の頭の中で、こんな風に短縮されてしまわないのか。
 
 
私は、悲しみや悔しさを感じて涙を流すこと自体は、悪い事でも恥ずべき事でもないと思う。理由がなく泣けてくるということも、人間ならあるはずだ。いつまでも親が助けてくれるわけじゃないので、ガマンしたり、耐える練習も必要だれど、もし「泣くのは恥=悲しみを感じるのも恥」と思い込み、人間本来の感情が欠如してしまうくらいなら、ちょっとくらい泣き虫な息子でもいいから、学校でも会社でも、涙を流してほしい。
 
 
オフィスでは、管理する側にとっては、いちいち立ち止まるような兵士は要らないのかもしれない。常に感情を押し殺した人間の方が、コントロールがラクそうだ。(特に女子に泣かれた日には、どうしたらいいのか分からないし。)しかし、受注が決まった時にはニコニコ顔でハイタッチしてくるくせに、受注が決まらなくて悔し泣きしていたら「気色悪い」と言う上司ってのは、なんだかなあ。まあ、「家でやれ」ってことなのかもしれないけれど。
 
 
私はまた、ビジネスとプライベートを切り分ける「ON/OFF」という考え方などは、あまり信用していない。モードの切り替えぐらいはするけど、どちらも同じ人間、地続きの自分である。全人格を賭すのも危険だけれど、ある程度、自分という人間のフィルターを通して仕事をしないと、その向こうにいる別の人間(お客さんとかね)のことを想像し、何かを提供するのは不可能だと思っている。そして私は、そもそもよく泣きよく笑う人なのだ。ONの時だけ悲しみを殺せ、というのは難しい。だいたい、つい20歳くらいまで、人生に「ON/OFF」なんか無かったではないか。
 
 
オフィスは、戦場に似ているけれど、戦場ではない。必要以上に非人間的に振る舞う必要性を、私は感じない。悲しみという感情は、人生に必要なものだ。それは人の肥やしになり、仕事の糧にもなる。
辛かったら、悔しかったら、泣けばいいじゃん、男子。
もちろん、嬉しかったら、笑えばいいと思うよ。
 
 
 
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