kobeniの日記

仕事・育児・伏し目がちなメガネ男子などについて考えています

ポニョで崖っぷち少子化対策

 
ジブリが金曜ロードショーでやるのも、もはやこの国では海開きとか花火大会と同じ季節行事だ。カリオストロの城ジブリじゃないけど)とか魔女宅とか観ると、はあ夏休みだと思う。これが来年以降、ずっと「20世紀少年」になるのだろうか。それはちょっとイヤだ。これからも夏の風物詩はジブリであれ、という願いをこめて、今更ながらDVDが出た「崖の上のポニョ」を観た。※注意!以下そこそこのネタバレ含みます。
 
 
観る前にポニョに対して抱いていたイメージは、「子供向けアニメど真ん中」なのかなと。CGを使っていないとか、牧歌的な主題歌から、なんとなく「トトロみたいな感じ」をイメージしていた。
で、実際に観てみたら、もちろん、最も喜ぶのは小学生以下のお子さまたちだろうけど、もっとたくさんの「大人」が観るべきかも?と思った。子育て中の方はもちろん、子供なんて遠い未来のこと…という人とか、家族と暮らすということについて、前向きでも後ろ向きでもないんだけど、色々と問題が多いから漠然と不安。みたいな人とか。そもそもこちら「Webマガジン幻冬舎働くママさん、ポニョに癒される」のレビューを観て興味を持ったのだが、出生率崖っぷちのポニョ状態の日本を憂う、賢きはてなーの皆さんに、色々と示唆を与えてくれそうだと思ったので、感想を書いてみる。
 
 
 
■「女」と「マザー」礼賛の映画、に見えた
 
 
主人公の宗介の母親は「リサ」(声:山口智子)という名のワーキングマザー。日本中の母親が観た、これからも観ると言っても過言ではない国民的アニメで、働くママ登場。これけっこうスゴいよ。国民的アニメだからね。サザエさんだって専業主婦だよ。のび太のママがパートしてるのも見たことないな。リサは保育園を併設する老人ホームで働いてる。ワーキングマザーってTVだと、雑誌編集者とか弁護士とか、(そんな人あんま近くにいない…)という職業だったりしませんか。でもホームヘルパーやケアマネージャーなら、けっこう身近。今後この国に欠かせない仕事でもある。子供にとっても、リアリティある設定です。
 
 
大変そうなイメージがある介護職だが、リサはその仕事を活き活きこなしてて、とてもカッコいい。リサはたぶん、仕事ができるのだろう。息子もいるし、無駄に残業したりしない。だから、夫(船乗り)が「今夜、やっぱり帰れなくなった」と連絡してくると、「そうやって息子と嫁をほったらかしにして!もう知らん!」とぶちキレている。正しい。あまりにも正しすぎる。仕事で帰れないくせに「愛してる」とか信号(船だから、チカチカ光るライトでね)を送ってくる夫に、BAKABAKABAKABAKAと返事する。正しい。またも正しすぎて、私の送信済みメールかと思った。このエピソード書いたら、ハイクなら☆がたくさんもらえそうだし、Twitterで書いたらそうとうRTされそうだ。ママさん限定だけど。
 
 
リサはすごくしっかり者で、自分で発電機をまわしたり、無線のアンテナを立てたりなんでもできるのだが、けっこう家事は雑だ。ポニョが初めて家に来た嵐の夜、彼女が作ってあげた夕食は、ハム乗せただけのインスタントラーメンだった。「ポニョ、ハム、好きー」なのだ。そのラーメンの美味しそうだったこと!子供たちの幸せそうな顔ときたら!停電で真っ暗な中、タオルと蜂蜜入りティーで子供たちをあたため、「フシギなことが起こっているけど、今は落ち着こう」となだめて、限りあるお湯と電気でラーメンハムのっけをつくる。…母ちゃんカッコイイ、カッコイイよ!運転が荒すぎるけど!机の上汚いけど!手抜きとはいえ、火や水をちゃんと使える、家のことが一通りできるっていうのは、「生きる力」があるってことなんだな。世のママさんたち(&ママレベルに家事・育児しているパパさんたち)は、そのことを誇りに思うべきだ。そして子供たちは、お湯やら電気やらの扱い方を、リサのさりげない行動から学んでいる。
 
 
街で一番見晴らしのいい場所に老人ホームがあり、そこで暮らしているのはおばあちゃん達ばかり。彼女たちには、次世代を育てるという大仕事を終えた後のサッパリ感が漂っている。ポニョ家でも宗介家でも、母親の存在がデカく(ポニョ母にいたっては文字通りサイズもデカい)、父親はオソノさんのダンナ並に存在感が薄い。宮崎駿カントクの女性の描き方は、地に足がついており、それでいて視線が温かいなと思った。
 
 
 
■こどもって、あんがい、こどもじゃない
 
 
リサの行動を観察しているせいか、宗介は何でも自分でやってみようとする子だ。リサも、あんまり手を貸しすぎない。「自分で行けるでしょ」「一人で待てるよね」と促す台詞が印象に残る。まあ、ママはママで忙しいから、しっかりしてもらわないと困るんだよね。
 
 
宗介は父と母を「リサ」「コーイチ」と呼んでいる。もちろん、父母だということは理解している。実際に家庭で、父や母をそう呼ばせるかは置いといて、そのコミュニケーションは親が、庇護しながらも子を一人の「個人」として認めているような印象を与える。宗介はまだ5歳だけれど、「リサを迎えに行かなくちゃ」「助けなくちゃ」と、その心が、まるで一人前の大人のように動くことがある。

  
 
実際問題、5歳とか8歳とか、そんなキッズが空から降ってきた女の子を助けたり、「バルス」とかできるか?王蟲とか実際に目の前に居たら絶対チビる。それに比べれば、宗介の冒険は日常の延長にあるから、観ている子供たちは物語を、うまく現実に「お持ち帰り」することができそうだ。また大人にとっては、時にはべそをかきながら、励まし合って前へ進む5歳の頼もしさに、リアリティを感じながら観ることができる。
 
 
子供自身の「生きる力」を信じる。必要以上に「世話をしなくては」「その人生に責任を持たなくては」と気負わなくてもいいんじゃないか。大事なのは、豪華な食事を用意するとか、完璧な父・母親らしく振る舞うとかいうことではなく、適切な時に適切な会話と、ふれあい(抱きしめるとかね)を用意することなんだろうな。そういう親子関係の描かれ方は、「子育てって、負担が大きいのでは」「ママとして、もっと頑張らなくちゃいけないのかな」と不安に思っている女性(昔の私もそうだったが)にとっては、かなりホッとするものじゃないだろうか。
 
 
 
■「世界の美しさ」を信じたいのは、大人の方だ

 
 
少子化は原因が色々あって複雑だ、と言われているが、産む性である女性が、「こどもが欲しいな」と心から思えるかどうか?そういう世の中かどうか?という観点も、とても大切だと思う。ポニョは子供たちに、世界の美しさ、人間であることの喜びを魅せてくれる映画なのだが、結果的には『大人たちに、人生の素晴らしさを再確認させてくれる』そんな映画にもなっている。つまり「こんな世界でなら、子供を持つのもいいかもな」という気持、この世に新人を招いて「けっこう、いいでしょ」と言いたくなる気持、まだ無力な子供たちを、この世の邪悪やあれこれ(天災含む)からとにかく守りたい、という気持。
 
 
もちろん、こども手当で月2万円、みたいな政策がまず大事だし、政府には少子化対策として、フランスなんかに比べ遅れてる部分を、全部マネするくらいの気概でやってもらいたい。でも、「損得」じゃない、もっと根源的な部分ーどうして人は家族という他人と、共に暮らしたいのか?といったーに訴えかける、この映画みたいなものも、並行して大切だと思う。
 
 
少子化対策って、「既に子供がいる人」のためだけにあるんじゃないよね。たとえば、お盆に海外でバカンスを楽しんだOLさんが、帰りの飛行機の中でポニョ観て「極上フレンチもいいけど、なんか宗介とポニョと一緒に、ハム乗せたラーメン食べたくなった」って感想を抱いたら、それもひとつの少子化対策になっているような、気がするのだ。
 
 



追記:ブコメありがとうございます。リサって、バッシングにあってたんですか?マジっすか?!私リサ大好きですよ。あのラーメンが、ものすごく手の込んだカレーだったら良かったの?とたんに退屈になる気がしますね、それ。嵐の夜ですからね、冷蔵庫止まってるかもしれないし。あと「まず、なんかお腹にいれる。早く、美味しく」っていうスピードも大事でしょ?おばあちゃん達の命も気になりますよ。
それでも自分の子育てを優先しろって?



 


 

崖の上のポニョ [DVD]

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