kobeniの日記

仕事・育児・目に見えない大切なものなどについて考えています。

不況の中で、少子化(子育て支援)についてできることって何だろう?

女の地位を具体的に男と同じまで引きあげて、女のひとが「二級市民」でないことをシステム的に保証することは、もちろん「女たちのため」とか「女権の伸張」というようなことではまったくない。
「社会全体のため」であって、しかもそうすれば社会全体の生産性は上昇する、ことがはっきりしているからです。

身も蓋もないことをいうと日本なら日本という経済集団が、
毎年毎年厳しくなる世界市場の経済競争に打ち勝つために絶対に必要な制度改革、なのだと思う。

id:gameover1001さんが、こんなエントリを書いて下さったので、お礼に代えて。



■社会の声と、企業のホンネ



少子化に対する社会の問題意識というのは、いま非常に高まっていると思います。子ども手当という制度の是非はともかく、これまでニュースで「子ども」の問題がここまでクローズアップされることは、あまりなかったのではないでしょうか。少子化を止めなければ、労働力は減る一方で、国の競争力も弱くなり、後に生まれた人が背負う負担が常に大きくなるという問題は、誰の目にも明らかです。



「社会問題」という風に言われると、どうも自分に関係ないという気持ちになってしまうものですが、「どんな社会に住みたいか」ということを考えてみると、どうでしょうか。子どもを持つ・持たないを自由に選択できる上で持たないのではなく、養育費の問題や自らのキャリアへの影響を考えて、本当は持ちたいと思っている人が消極的に「持たない」という選択をする社会とは、どんな社会なのか?私たちにとってすばらしい未来なのか?というと、私にはそうは思えません。つまり、世界市場の競争に勝つためとか、そういった大きな目的意識まで持っていなくても、身近な問題として、解決を願っている人は、たくさんいると思います。


ガメさんは「制度改革」と書いてくださっていますが、この国の少子化の大きな原因のひとつは、日本は戦後、男性(総合職正社員)が働き、女性(専業主婦)が家を守るという、「生き方のロールモデル」を、企業と社会の両面において、基本的に一種類にするというスタイルをとって成長してきた。ただし現代では、すべての男性が正社員になれるわけでもなく、また女性の社会進出は進んでいるのに、そこで新しい働き方・生き方を増やすという方向に、なかなか転換できずにいる。その改革が、うまく行っていないというのが実情だと思います。とある本に、ワークライフバランスというのは、静かな革命だと書いてありましたが、そうしたスタイルを抜本的に見直すという意味では、まさにそういうものだと思います。



社会の問題意識は非常に高まっているのだけれど、企業においては、状況はまったく逆だと思います。


この不況の影響で、企業は非常に厳しい経営状態に置かれています。私が様々な会社のケースを見聞きして感じているのは、従業員の立場が非常に弱くなっているということです。なるべく少ない人手で、なるべく高い生産性を上げようと、ギリギリの人員でギリギリまで働かせたい。人件費は固定費だから、ムダがあるならいっそ解雇したい。そうなると当然、時短利用者はより立場が弱くなります。育児休業中の人間も同じです。短期的に見れば、コストがかかる・生産性や能力が劣るので排除したい。景気が悪いので、今はそういうことを言いやすい雰囲気だということです。

(もちろん志の高い企業はそんなことはありませんし、人員に余裕がある企業は別かもしれません)


● 男性の育児休暇取得率が低下

● 育休切りの相談が最悪ペース





■信条と処世は一致しない、ときもある



この、「ギリギリの人員でギリギリまで(今までと同じスタイルの長時間労働で)」という企業からの要請の中で、社会問題としての少子化について何かアクションするというのは、とっても難しいんじゃないか。
仮に自分が、少子化って問題だよねと思っていても、


「育児休暇が取りたいなんて言える雰囲気じゃない」
「まわりがこんな働き方じゃ、とても子供を育てながらはムリ」
「時短の人が休むと自分がカバーしなきゃならないのは辛い」
「失業中なので、就職の条件に労働時間を選んでいる余裕なんかない」


などなど、そういう気持ちになるのは無理もないです。


で、実際、2〜3年前の好景気の頃に、盛り上がっていた女性活用や子育て支援というのは、優先順位が下がってしまい、プロジェクト自体止まってしまったという企業も少なくないのではないでしょうか。



いま子育てしながら仕事をしている人や、育児休暇を取っている人の中に、会社の雰囲気のせいで、肩身の狭い思いをしている人もいるかもしれません。育休切りや、それに近い目に逢って、自分に自信をなくしている人もいると思います。でもまずは、自分のことを責めないでいこうよ。って思う。はじめに書いたように、いま世の中では、少子化に対して意識の高い人はたくさんいる。ガメさんのように、こういう経済状況でも(だからこそ、かもしれません)正しいことを言ってくれる人もいるしね。


「信条」と「処世」というのは、一致しない時だってあるんだと母が言っていました。とにかく自分が生き延びることが大事という時に、処世として生きやすい方を選ぶことを、誰も責めることなんかできませんよね。




■それでも今、できることはないのか?



では、どうしたら少子化は解決に向かうのか?こんな状況下でも、私たち個人にできることはないのか?ということを考えてみる。なかなか、むずかしいけど、考えてみます。



● 企業をチェックする。


利潤を追求することを主な目的としている企業に、どこまで少子化問題への関与を求めるのかは、非常に難しいことだと思います。ただ、仮に、お金や保育の面の解決等を、国が担保してくれたとしても、親が働く場所のほとんどは「企業」ですから、子育て中の従業員に対して、配慮はどうしても必要です。


ただし、これがカンタンにできたら、少子化はここまで深刻でないはずです。おそらく多くの企業では、女性は若いうちに寿退社で随時入れ替え、男性(あるいは女性)総合職に長時間労働させる(ただし定年まで働けないし、給料は上がらないが)に近い形を、抜本的に変えるのが億劫なのでしょう。


「静かな革命」に参加しない企業は、社会的な責任を果たしてない、ダメな企業だ。と考える。そういう会社の商品・サービスを買わない。逆に、子育てに優しい会社は積極的に応援する。口コミで伝える。


大企業→「くるみん」マークを取得しているところとか
厚生労働省:次世代法に基づく認定企業717社(平成21年6月末現在)
中小企業だからできない、というわけではありません。
特集 中小企業におけるワークライフバランス


学生さんは、建前でなく本気で、子育て支援等に取り組んでいる会社を見極める。OBやOGに、実際のところを聞きに行く。
そういう会社は「人」を大事にするので、男女問わずメリットのある話だと思います。


いまは求人が少ないので、企業と対等になりづらいですが、景気が回復してきたら、取り組んでいる企業を優先的に選んで就・転職するとか。


社会的責任を要請するのは、私たちの声であって、それがハッキリしなければ、企業は自社の得にならないと判断することはやらないでしょう。逆に、それらが企業の利益や、採用成功に大きな影響を与えるとなれば、行動せざる得なくなるはずです。


もちろん、企業を中から変えることもアリだと思います。
会社から見て「辞めてほしくないな」という人が、率先して育休を取ったり、ムダをなくして早く帰ったり…とやっていると、影響は大きいと思いますので、できるビジネスマンの皆さんには、ぜひ実践して頂きたいと思います。



●世論をつくる。空気を変える。


私がすごく気になっているのは、私たちより世代が上の人たちのことです。誰もが正社員に当たり前になれる時代が終わっていることや、将来への不安から共働きを選ぶ人が多いこと、介護の問題が身近に迫っていることを、あまり理解できていない人がいる気がします。例えば子供が定職に就かないと怒ってばかりいるとか、未だに「男は外、女は家」しか認めるべきではない、と思っている人とか。そういう人たちが気づく位に、「時代は変わったのだ」ということを感じさせる空気をつくる。上の世代と、積極的に会話するということも大事だと思います。
なかなか難しいですけどね、話が通じなくて。自分が守ってきた・信じてきた・成功した・それしか選べなかった…ということを覆されるのは、きっと辛いことだろうけど。



●個人としてできる・できない&社会の構成員としてできる・できない、を分ける。


例えば共働きの夫婦が、家事・育児の分担について、イーブンにいかないとケンカになった時。「イーブンにやってくれない相手が悪い」と一刀両断することも、「社会がそういう風になってないからしょうがない」と諦めることも、あまり良くないと思います。個人としては、家族に対して、現実的にどこまでできるか考える。それも、小さなようで大きな一歩だと思います。また、たとえ家族、あるいは会社に対して、今すぐに何もできなくても、地域の子育て支援に参加してみるとか、社会の構成員としてできることはあると思います。これは、子供がいる人・いない人を問わない話です。もちろん、強制されるべきものではないです。




もちろんこの他にも、政治に要求する等、色々とできることはあると思います。でも一番大事なのは、「少子化問題について、自分に関係のあることとして知っておく・考えておく」ということで、今はそれだけしかできなくても、まったく問題ないのではという気がします。



少子化問題=共働きの夫婦を支援・促進する、といったことでは必ずしもないと思います。これからの企業には、様々な価値観や当事者意識を持った人がいた方がいい。その人たちに用意されるインセンティブは、必ずしも高額な給料のみでなくてもいい。時には休んだり留学したりできる余裕があった方がいいし、時間や体力ではない価値を発揮できる、柔軟な目標設定があってもいいと思います。この不況を契機に、風土や制度を抜本的に見直す企業は強いと思うし、私はそういう会社を応援したいです。

そしてまた、忘れてはいけないのは、誰かに機会や権利を与えると、誰かのそれが疎外されるということのないようにすること。皆で考えながら、でも手を休めず進めることが大切だと思います。





10年後・20年後に、私たちの子供が、男女に関わらずのびのびと自分らしく生きられる世の中にするために、静かに、ちょっとずつ、変えていきたいですね。