kobeniの日記

仕事・育児・伏し目がちなメガネ男子などについて考えています

「児童虐待―現場からの提言」を読みました/産後の(主に)母親への行政支援について

こんばんはkobeniです。先週からずっと児童虐待について考えていました。私は子供の年齢が近いせいか、こんなことは滅多にないことだと知りつつも、非常に悲しい気持でいっぱいでした。やっと休みに入ったので、ここ数日で読んでいた本の一部内容と、私の考えをまとめてみました。例のごとく、長くなってしまいましたが、おつきあい頂けたら嬉しいです。


児童虐待―現場からの提言 (岩波新書)

児童虐待―現場からの提言 (岩波新書)


「児童虐待―現場からの提言」は、児童相談所の現場で働いている方が書いたものなので(2006年の本です)、虐待や非行などの現場の最前線で活動されている方の想いがどんなものなのか、よく分かる内容でした。今回の大阪の事件をきっかけに私が抱いた疑問にも、ある程度答えてくれる内容だったので、皆さんに読んでもらえたらと思います。


本の帯には「親を責めるだけでは解決できない」と書いてありましたが、児童虐待は本当に様々な原因、要素が複雑に絡み合って起きているようで、それ故にこの本の問題提起の数もとても多くなっています。現場の方々は本当にがんばっていらっしゃるなという印象ですが。いくつか抜粋しますね。




児童相談所の「人材」の問題


「平成21年度中に、全国201か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は44,210件(速報値)で、これまでで最多の件数。前年度の42,664件から1,546件の増加となっている。」
児童虐待相談対応件数等及び児童虐待等要保護事例の検証結果(第6次報告概要) |報道発表資料|厚生労働省
それに対し、全国に配置されている児童福祉司は2400人。(NHKの報道より)単純計算で一人あたり約20件のケースを抱えてることになる。
この本によるとアメリカでは子供の一般人口2500人に一人、専門家(ソーシャルワーカー)がいる。イギリスでは5000人に一人、ドイツでは900人に一人。日本は、一万数千人に一人だそうです。子供たち一人ひとりに丁寧なケアをするのは難しい状況でしょうね。
また児童相談所は各都道府県に一つずつあって、地方公務員がそこで働いてるわけですが、必ずしもすべての人が専門家(児童福祉司など)ではないらしい。こないだまで戸籍課とか水道課にいた人が、児童虐待や非行に関する仕事に異動する可能性があるわけです。*1
児童虐待に携わる人って、すごく特殊な能力と、志向の持ち主でないとダメだと私は思いましたよ。だって


●虐待の傷を癒して日常生活を送れるようにする
→専門的なカウンセリング能力(ソーシャルワーカーとかが担当?)
●虐待されて一時保護された小学生を「だいじょうぶだよ〜」と安心させる
→保育士が持っているような子供に対する知識や興味関心
●ネグレクトされた赤ちゃんを病院に引き渡す
→乳幼児に対する知識(抱っこもミルクのあげ方も知らないのはマズそう)
●ドアを開けることに応じない親に対して、警察と一緒に立ち入り調査をする
→自分に身の危険があっても勇気を出せるだけの使命感や責任感
●施設や家庭裁判所等との調整で様々な法的手続きを処理する
→法律などに関する専門的な知識と事務処理能力


パッと思いつくだけでもこのくらいあるもん。これすごく難しい仕事だよね。やりがいはあるけどこれで休みがなかったり薄給だったりしたら、そりゃみんな辞めていくよ…。事実、本書には、労働環境が過酷だという生の声が書かれています。一人の人間がここまでカンペキでなくて良いから、それぞれ専門性を持った、やる気のある人(ここ重要)が分担して対応できるくらい、人数を増やしてあげたいですね…





■虐待する親もまた被害者である

角度を変えて言おう。児童虐待の加害者となってしまう保護者は、これ以上ないというほどの苦しみ、困難を味わわされ、また人権侵害の被害者の側に立たされてきたのであり、その果てに到達したのが、児童虐待という結果なのである。だとしたら保護者自身が、まずは精神的・物理的に、また社会的に十分な援助を与えられなければならない。


児童虐待の要因として、研究の結果、●その親自身が小さい頃に愛情を受けていない●生活にストレス(経済的な不安や育児負担、夫婦不和など)が積み重なって危機的状況にある●社会的に孤立し、援助者がいない●親にとって意に沿わない子である(望まない妊娠・愛着形成阻害・育てにくい子など)の4つの要素が揃っていることが指摘されているのだそうです。(同書より)


もちろん同じような境遇にあっても、がんばれる人はいるけれど、がんばれる能力とか、がんばれる土壌のようなものを、果たして我々は自分の努力だけで得てきたと言えるだろうか? 例えば「(仕事や子育てその他全般)自信に満ちた私」は、生きていく上で大きな武器となるけれど、自尊心の持ち方って、どんな家族の中で育ったかが、大きく影響していると言われますよね。必ずしも「自己責任」で手に入れた性質だとは限らないと思うのです。

で、この辺りは、この@ 
さんのツイートをぜひ見てほしいと思います。

ネグレクトについての1つのケース - Togetterまとめ

虐待を犯す人もまた被害者だからといって、罪をなかったことにするとか、見て見ぬふりをするというわけではありません。この本には、
「ある時は強制力を加え、ある時は福祉的に援助していく、その両面が大切」
という風に書いてあります。非行少年に対する時の対処(少年法など)が参考になると書いてありました。それは、こういった事件に対峙した時の、我々の態度や考え方としても参考になるのではないでしょうか。




■母親に対する行政支援について


これに関しても、本では触れられていました。この国では育児にあたるのが圧倒的に母親が多いので、様々な支援が必要になるということです。ここは私も(一応)母親なので、自分の体験を基に書いてみたいと思います。


出産後、どんな行政支援を利用しましたか? - Togetterまとめ


ツイッターでちょっと聞いてみた感じですが、私の利用状況とか印象も同じような感じです。行政の支援、かなり頑張っているなという印象ですよね。でもこれ、もし我々が10代だったら、こんなに上手く利用できただろうか。私は10代〜20歳前後の頃、まだ親に様々な点で援助を受けていましたし、役所は非常に遠い存在だったように思います。


自分の体験を振り返ってみると、産まれてしばらくは、まず子供がちゃんと息をしているかどうか、不安で眠れませんでした。いや、今となっては笑い話ですが、ホントに、「いきなり死ぬかもしれない」なんて思っていましたね。しかも死んだら私の責任だ、というような重圧感を日々感じてました。入院中は、おっぱいを欲しがっているだけなのに「なんだか苦しそうなんですけど!!」とナースコールしたこともありましたし、家に連れ帰ってからも、息子が泣き止まなかった時に、ものすごく動揺してしまったことがあって、うちの母に「あわてないの!」と怒られたこともありました。だから保健師さんが家庭訪問してくださった時は、本当にホッとしたのを覚えています。それまで全く外に出てませんでしたので。(※ちなみに、保健師さんの家庭訪問は、上記のtogetterにも出てきますが、実施している自治体とそうでないところがあるようです)


まあ、そのくらい事前知識がないし、赤ちゃんが身近でないということは、年齢や家庭環境に関わらず、現代の母親に共通していることだと思います。で、「虐待を防ぐ」というような話でいくと、かつての私のような、ギリギリの精神状態にある人に対して、行政はどう対応するのが良いか?というのが一つあると思う。私も産後二か月でちょっと鬱気味だった時に、健康診断で役所を訪問した際に(いろいろ聞かれるので答えたんですが)「仕事復帰に向けての不安が大きいです」みたいなことを言ったら「あ〜それは二ヶ月くらいの人はみんなそう言うのよね〜」とちょっと杓子定規気味なことを言われ、申し訳ないんですが「ああこういうお役所の人に正直に答えてもしょうがないんだ」と思ってしまいましたよ。
虐待は、育児への手助けのなさや自信のなさ、子供の育てにくさから来るケースもありますよね。自分を責めて責めて…という人にはある程度専門スキルのある人に対応してもらいたい。特に産後しばらくは、「産後うつ」の発見も兼ねることになるだろうな。※もちろん、かなりキチンと対処している自治体もあるようです。ここはとても評判がいいですね
武蔵野大学附属施設 産後ケアセンター桜新町 -Postpartum Care Center-



また、場合によっては、受け身ではない積極的な介入が必要なのかもしれません。出産後ひと月を過ぎると、健診などは産院から行政の場(役所や支援センターなど)に移ります。予防注射や健康診断は、お知らせが手紙で来るだけです。子育て支援がどこで行われているか知るには、役所に行くなどのアクションが必要になります。つまり子供が、産院を出た後にどのような状況に置かれているかは、あくまでも親の自主的な行動を元に行政が(母子手帳とか専用のカルテ的なもの?で)把握するという形になっている。上記のtogetterを見て頂ければわかるように、親の側がリテラシーと行動力に基づいて支援を利用するわけです。


たとえば、予防注射や1歳、3歳などの健康診断をずっと「受けてない」子が、いまどういう状況に置かれているのか、行政は把握しているのかな?今回の事件のように、引っ越してしまったり、里帰りから戻ってくるといった、移動を伴う場合は?若ければ、区役所からくる手紙のとおりキチンと行動できない子もいるかもしれない。そもそも行政を信頼していなければ、ますます足は遠のきますよね。*2
少なくとも、虐待を解決するためには、親や子供と気の長い、積極的なつきあいが必要になるのでしょうね。





「ことし半年間に全国の警察に摘発された児童虐待は181件と、これまでで最も多くなり、虐待によって死亡した子どもは18人に」(NHKニュース)
これを多いと見るか、少ないと見るかですが、これ以上、子供が死ぬようなニュースに私たちは耐えられるんだろうか。この国は周産期医療が進んでいるので、乳幼児の死亡率がとても低いですよね。なのに虐待で死んでいく子供がいるのは悲しすぎる。しかも、死ななければ、虐待があっても構わないというわけではないし。
とはいえ虐待の現場は、なかなかにシビアな状況であるようです。「父親の暴力から逃げてきた女子高生が玄関先にいる」「母子がガスで無理心中を計ったが、子供を連れて帰らせてよいのだろうかと病院から連絡が」「立ち入り調査をしようとしたら、父親が刃物をふりまわして怒っている」この本に書かれていたのはそういう世界でした。児童相談所の人はとても大変だと思う。でもそこに子供たちがいますからね。
絶望するでもなく、無関心になるでもなく、この場所、子供たちが生きてく場所を作っている一人の大人として、できることをするしかないな。と思っています。知恵と想像力を使えばなんとかできるはず、私たち大人なんだから。



児童虐待―現場からの提言 (岩波新書)

児童虐待―現場からの提言 (岩波新書)



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ファザーリング・ジャパン緊急フォーラム ~父親たちで考える産後うつ問題~ - Togetterまとめ


※8/12からしばらくPCをさわれない環境に行くので、コメントなどを頂いてもお返事は遅くなります。すみません。

*1:この本の書かれた2006年時点の話です、現在も同様かは分かりませんが

*2:例えばかつて非行の行為なんかで、補導されたりして行政の指導を受けた時に、その対応が冷たかったりしたら、こっちから助けを求めようとは思わないかも