kobeniの日記

仕事・育児・伏し目がちなメガネ男子などについて考えています

イクメンを目指す男子向けの講演@東大に行ってきたよ 〜治部れんげさん「男性のワークライフバランス」〜

みなさんこんにちはkobeniです。最近、マジメなレポートばっかりでなんだか恐縮です、ここらでひとつ、ママ友ドラマをdisるくらいのくだらなさを発揮したいところですが、今日もかなりマジメレポートです。
先日、東大本郷キャンパスで行われた、治部れんげさんの講演「男性のワークライフバランス」〜フェアな人ほど大変なのはなぜか〜
Page Not Found - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部へ行ってきたよ、というご報告です。

この講演は、東大の学生(博士課程)さんでもある小寺千絵さん @
が企画したもので、基本的には東大の男子学生向けの講演でした(なので講演自体、大学や大学院、研究者向けをかなり意識した内容となっています)。私は、小寺さんとはツイッターでよく会話させて頂いており、その縁でお誘いを頂いたのでお邪魔したのでした。
そして講演をされた治部さんは、雑誌記者をされており、アメリカでの留学経験を元にワークライフバランスに関する著作も出されています。3歳のお子さんがいらっしゃり、ダンナさまは大学教授をされているとのこと。なので大学の実態にもお詳しいのですね。
ちなみに小寺さんは、twitterを通して治部さんと知り合い、東大近くのカフェでお茶したのが2月、その流れでこの講演を企画し3ヶ月後に実現するという、赤門もビックリ(?)の行動力の持ち主なのでした。すごいねー。

当日は私、はじめての東大にドキドキしすぎて、「東大についたらぜったい迷う」というツイートをなぜか三回連投してしまうと失態を犯したりもしたのですが、無事にたどり着き講演を聞いてくることができました。
スライドによるデータ提示も多かったので、文章のみでその概要をお伝えするのは難しい面もあります。なので、「私が印象に残ったところを中心に、サクッと」レポートします。


■ 理想のワークライフバランスを実現するのは「男性の方が困難」

冒頭に、「配偶者の勤め先は、従業員のワークライフバランスに配慮しているか?」という質問に、妻・夫がそれぞれ答えたデータが紹介されました。結果は、夫から見た→妻の職場よりも、妻から見た→夫の職場の方が「配慮していない」と感じる割合が高かったとのこと。日本でも海外でも同様の結果が出ているそうです。
つまり男性の方が、仕事と私生活のバランスを取ることに困難を感じているケースが多い、ということなのですね。そして、それは一般企業だけでなく、アカデミア(=大学など、学究を行う場所全般)の世界でも同じ傾向があるんだそうです。長く研究室に居たり、ボリューム多く作業している人が評価されたり…といったことです。
この日初耳だったのですが、アカデミアの世界には「ブラック企業」ならぬ「ブラック研究室」というのがあるらしい。指導教官が「えっ?このデータが取れるまで帰さないよ、何言ってんの」…みたいな。東大男子に教えてもらいましたよ。なんだかなー。教授より、せめて菌とか酵母に左右された方が、パートナーも納得が行くってもんなのに。 ※小寺さんが「今日は残業だ」という日は、実験で酵母をいっぱい増やさないといけない日だそうです。なんとなく憎めない酵母…



■ 在宅や育休以外にも、働き方は色々あるアメリカ

もちろん研究対象のジャンルにも依るのでしょうが、そもそも研究職というのは、就職先などを国内に縛る必要性があまりないことや、治部さんにアメリカ留学経験があることから、講演ではアメリカのワークライフバランスの事例が積極的に紹介されました。
アメリカでは育児休暇や在宅勤務の他に、「Compressed Work」という例があるとか。これは出勤日数を減らして、出勤日には長く働くというもの。たとえば月〜水にしか会社(大学)には来ない、その日は遅くまで働く(学会に出るなどする)。けれど週末にかけては、基本的に働かない、あるいは在宅で働く。みたいなことでしょうか。日本ではあんまり見かけない働き方ですね。「あの人、月水しか会社来ないね」ていうね。いいなーそういうの。半分だけ会社員みたいなのいいなー。
そういった多様な働き方が進むのには、アメリカの様々な文化的背景が影響しています。国の制度としての育休や産休などはボロボロ→企業や大学が「人材確保のための福利厚生の一環」として制度を各種そろえる→競い合うため多様な制度が生まれる。といったことなど。そのワークライフバランス施策は優秀な人材確保が目的なわけで、優秀「でない人」には徹底的に冷たい国とも言え、バラ色というわけにはいきません、とのこと。
アメリカの話で、私が印象に残ったのは「交渉の文化」というやつです。アメリカでは、労働力の提供=「個別の契約」という考え方なのでしょう。前例が無ければ自分の実績を担保に交渉する(大学や企業で)、という事例がいくつか紹介されました。
日本では、労働力の提供=「集団への所属」というような要素が強く、クビにもなりにくいが個別交渉もしづらい、というところがあるように思います。先陣切って男性が育休を取ろうとすると「それは前例がないので…(空気乱さないで…)」みたいなことになりがち。



■「イクメンになるかならないか、あなたが決めなさい」

日本人男性は、世界的にも家事時間が圧倒的に短いことで有名です(すみませんがソースは各自調べてください、当日はデータが提示されました)。これは、妻が働いている・いないに関わらず、です(むしろ妻が働いている方が数分少ないデータがあったりしてガクブルでした)。
だからもし、イクメンを志す男子が「女性は家事育児、男性は仕事というような旧来的な価値観ではなく、すべてを対等に分担するような関係でありたい!」というような志を持った場合、「それはけっこう、いばらの道だよ」というお話がありました。
だって、たとえば専業主婦の奥さんがいる男性は、奥さんが家事育児をぜーーーんぶやってくれるから、仕事に専念できる。あるいは奥さんが働いていても、お迎えや病時の対応や、子供の教育に関してなどはすべて奥さんが切り盛りしていたら、当然「フェア(対等)にやろう!」という人よりも、たくさん仕事をする時間がありますよね。
この講演のタイトルにもなっている、「フェアな人(男性)ほど大変なのはなぜか」の答え。それは、「フェアにやろうとするほど、周囲の男性陣との摩擦も起きるし、自分もキャリアや学問への投資の時間を、家事育児のために削る必要が出てくる」よ。ということです。しかも冒頭に書いたように、その摩擦は、「仕事を続けようとしている母親より、いろいろ大変」ということなのです。ズドーン…

カンタンに言えば、「イクメンになるなら、強い意志を持って」ということかもしれません。もう実践している方々もたくさん居て、その人たちからすれば「当たり前じゃん」ってことだと思います。
ええと、これは完全に主観、私の印象論でしかありませんが、現役のワーキングマザーが「ママになっても働く」ということを「意識的に選び取っている」のに対し、「パパになったら家事育児をする」ということを、意識的に選び取っている男性は、まだ少ないように思うのです。もっともっと平たく言うと、ワーキングマザーを目指す女性が「どうやったら子供を産んでからも仕事を続けていけるだろうか…」ということを見据え、かなり虎視眈々と生きている、それこそ職業選びや学校選びすらその観点を持っているのに対し、男性の場合「結婚した人がたまたま『仕事を続けたい』という女性だったので…」というきっかけで、悪く言えばなりゆきで、ちょっと多めに家事育児することに!という人が多いような気がするんです(わーーこれかなり主観ですごめんなさいごめんなさい)だから「(家事育児をするように)夫を育てる」という言葉があったりするのではないかと思うんです。ワーキングマザーになるように「妻を育てる」とか、あんま聞いたことない。
だからこそ逆に、意識的にイクメンを実践している人の覚悟や、行動には目を見張るものがある。会場に来ていた@
さんとか、言動が眩しくて直視できません。もちろん、そういう人がいることも確かです。が、まだ少ないのではないか、と思うのです。

治部さんの講演には、こういった現状をふまえて、「いばらの道で、周囲からの圧力も大きいけれど、男性社会を変えうるのは、やはり男性。自分の意志でイクメンの道を切り開いてほしい」というメッセージが込められているのでは。と感じた次第でございましたよ。そういう人、きっと増えていくと思うんだよね。これから。

ちなみに見出しはエヴァンゲリオンミサトさんの台詞*1…をちょっとパクりました。どんな奥さんと結婚するか、「どの程度」家事育児をする生き方を選ぶのかは、自分の意志で決めようねシンジくん!


ここまで読んできて、「てか東大なんて、超エリートの行くとこじゃん。東大だから、東大卒だからできるんじゃないの」とお思いの方もいると思います。まあね、この講演自体がまず東大生がメインターゲットのものだったので、そういう内容になっているのは否めない!が、「人材確保の戦略としてのワークライフバランス」は、けして大企業だけが実践していることではないですよ。むしろ、知名度では勝負できない、けれど個性のある人材を採りたい中小企業が実践していたりします。育児休暇が最長6年取れるサイボウズとか、ワーキングマザーが伸び伸び働いてるライフネット生命とか、いろいろありますから。
とはいえ、「(優秀な人は能力を引き換えに各種働き方を選べるが)優秀でない人はどうするのか」という点については、全く別軸で議論が必要です。メリット/デメリット、といった議論だけでは解決できない問題だとは思います。



ちなみに、ここに書いた以外にも、東大理学部の教授である黒田先生(すごいステキな方だった…教わりたい、なにかを)と治部さんのパネルディスカッションや、会場の方からの質問コーナーもあり、充実した講演だったのでした。そして終了後の飲み会では、学生さんでありながら既に三児の母(!)である小寺さんの生き様に興味津々の私が、彼女に根掘り葉掘り質問してしまい、小寺さんは全然ご飯を食べるヒマがなかったのでした。ゴメン!小寺さんについては、機会があればここで何か書くかもしれません。



東大には、すべてのキャンパス内に「保育園」があるそうです。私も、本郷キャンパスにある「けやき保育園」を外からチラっと見てきました。
大学って、新宿だの銀座だのにはあまり存在しませんし、企業よりは、立地に自由度が高そうなイメージがあります。そうなると、職住隣接にも現実味があるし、企業内託児所よりも大学内保育園の方が、実用性がありそうな感じがしました。学生さん、研究者の皆さんが、充実したワークライフバランスの元に学問に没頭できる環境が、もっと整っていくとよいですねえ。そしたらきっと酵母も喜ぶよ!
帰り道にぷらぷら根津の街を駅まで歩きましたが、あの辺は古い建物が多く、風情があっていいわー。また行きたいです東大。


「サクッと」と言いつつ、割と長くなってしまいましたが、もし興味をもたれた方がいましたら、治部さんの著作を読まれてはいかがでしょう。また講演などありなしたら、私もtwitterなどでご紹介したいと思います^^


治部さんのtwitter @
治部さんのブログ(※良記事たくさんあります)
RengeJibuの日記
小寺さんのtwitter @

アメリカのワークライフバランスについて書かれてます。
『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』勁草書房

稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換

稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換


●あわせてよみたい:眩しすぎるイクメン@ichinosekiさんのレポート
フェアな人ほど大変?〜治部れんげさん 講演会: 外資系IT企業につとめる男性社員の育休日記!

●小寺さんも当日の内容をまとめてくださってる
共に歩む未来のために~治部れんげさん講演会。盛会でした!【追記】 けやきのき

*1:「いい加減にしなさい! 人のことなんか関係ないでしょ? エヴァのパイロットを続けるかどうか、あなた自身が決めなさい!」