kobeniの日記

仕事・育児・伏し目がちなメガネ男子などについて考えています

共働きの夫婦ゲンカはなぜ起きる? 夫婦コーチング平田さんインタビュー(後編)

 

お待たせしました!後編です。今の時代や社会の影響を受けて、夫・妻の関係に「ランク」ができてしまう、こともある…という話の続きです。前編はこちら

 

*

 

■ 「二人の関係の『外』にある要素」を、切り離す

 

kobeni/ でもね、私、「仕事」を「お金」だけに換算して話をしちゃいけないと思うんですよね。あ、こういう風に考えるヒントになったのは、角田光代さんの「紙の月」っていう小説なんですけど。ドラマや映画にもなってるので、ご存知の方も多いと思うのですが。

紙の月 (ハルキ文庫)

紙の月 (ハルキ文庫)

 

 

奥さんが働きに出て、稼ぐようになったら、凄く不機嫌になる夫が出てくるんです。奥さんは、自分も稼ぐようになってから、いろんな場面で強気に発言するようになる。長期の海外出張についてこいと言われて、「私にも仕事があるから」と言い返すようになる。たしか、割とクライマックスに、「お金でしか私の心をつなぎとめられないと思っていたなんて、すごく自信がないのね」っていうような、奥さんの台詞があるんですよね。

奥さんの仕事について、「お金」という意味合いだけで会話しちゃうと……例えばパートの奥さんは、いくら仕事が好きだったり、自分にとって「大切なもの」としてやっていても、ずっと「しょせんパート」みたいに、雇用形態で判断して、認めてくれない夫も中にはいる。今はパートでも正社員と同じような仕事を任されている人も多いのに、その上に家事育児が乗っかって、毎日大変だから仕事へのモチベーションも下がっちゃったり……。仮に、パートから正社員になってみないかという話があったとしても、夫の都合でずっと踏み込めないとか、そうなっちゃうと思うんです。本来の、夫婦の対等な関係が損なわれちゃう気がする。奥さんが、そういう風に一方的にずーっと自分がキャリア後退したり、何かしらガマンすることに、納得している(というか、ガマンではなく、好んで選んだ状態にある)なら、いいんですけども。

平田/  おっしゃる通りです。「額」で捉えてしまうと、いつまで経っても同じ土俵には上がれません。そういう仕組みに今の日本はなっていますし。

ただ、「本来こうあるべき」という正論とは別に、そのような「二人の外にある要素」が二人の関係に影響を及ぼすものなんです。なので、非正規雇用と正規雇用の賃金格差とか、マミートラックとか、一度正社員を辞めたら戻るのは難しいとか、男尊女卑とか、家事育児は女性の役割という古い意識とか……そういう社会の問題が夫婦の関係に影響を及ぼしている、ということです。(これら影響を及ぼす社会的、歴史的な風潮や事件等を、コーチングでは「タイムスピリット」と呼んでいます)

kobeni/  そうですよねえ…

平田/  で、コーチングでは、「タイムスピリットが二人の関係に影響を与えていますよね? でも、これは二人の力ではどうしようもないですよね?」って、二人の問題から切り離して、「この状況に、二人はどう取り組みたいですか?」という話し合いをしてもらいます。

kobeni/  ふむふむ。あ、ちょっと戻りますけれども、家事育児に関して、妻の方が「上」になってしまうという話ありましたよね。「私だって仕事をがんばりたいのに、どうして私ばかり後退なの」と思いながら、「夫の家事育児のやり方は雑! 私が主導権握りたい」と思っているわけですか? 自分が好んで、仕事と家事育児を両方やりたいと思っている(人もいる…?)

平田/  本人が自覚しているかはわかりませんが、「自分の思い通りになる領域を手放したくない」って方はいると思いますよ。「主導権を握りたい」とは思っていないでしょうね。そこは無自覚だと思う。

kobeni/  「育休世代のジレンマ」に、「女性らしさ」を受け入れられている人(ここでは、「最初から出産しやすい会社を選んで、入社した」みたいなこと)の方が、葛藤が少ない。とありました。そういう女性だと、「夫は外、妻は家」の延長で自己を捉えているので、そんなにケンカにはならないのかな。

「私を理解してくれない」という女性は、そういう性別役割分業意識はあまり持ってないんですか?

平田/  (実際にコーチングを受けた女性の例)均等法世代ですからね。「何で私ばかりがやってるの?」という感じでした。

話がそれちゃうかもしれないけど、面白かったのは、女性側が「私ばかり家事育児で大変!理解して!」で始まったコーチングが、男性側の立場を知ったときに「かわいそう……」という反応だったことがありました。そこはそこで、古くからある男性社会の「あるべき姿」に縛られる世界があって、そこで彼女はダンナさんを「理解」したんです。

kobeni/  だからお互いに、「自分の方が大変なのに」と思い込んでいるわけですよね。

平田/ そうです。

基本的に、どちらも忙しすぎるんだと思いますけどね。仕事が。

kobeni/  あーーー。ここで「企業の代理戦争」の話になるんだ。

これも「育休世代のジレンマ」にあった記述なんですが、「私は休めない」「僕だって休めない」みたいな衝突って、結局、どっちの企業が柔軟かを言いあっているだけであって(笑)

それも、仕事に対する責任感の表れだから、わかるといえばわかるんだけど、そこで夫婦共に「そもそも自分の職場、企業の体制自体を疑う」っていう視点がぜんぜん出てこないのもなあ…って思って。

子どもを大事にしたいだけなのに、病気になったから看病したいだけなのに、「休めない」方がおかしいんじゃないか? って思わないと、凄い自己否定と、子どもに対する罪悪感が高まってしまいますよね。

平田/  そうですね。そこは個人攻撃になりやすい。ただ、そこもさっきのタイムスピリットと同じことですよね。

kobeni/  コーチとか、第三者が入らないと、「タイムスピリットが影響しているため会話が噛み合わない」って、気付きにくいものなんですかね?

平田/ 「私がこんなに相手に要望を伝えにくいのは、収入格差があるからで、それは日本の社会構造や古い価値観のせいで、でもそれは私たちにはすぐには変えられないから、この状態で何を選択しようか」って気づいている人……いないわけではないでしょうけれど。

あと、ランクは、あること自体は悪いことではなく、無自覚に特権をふるうと関係が壊れるんですが、夫側が「妻が自分に要望を伝えにくいのは……」とは絶対に考えないですよね。

 

■ 二人が「どうしていきたいのか」は、100組いれば100通り

 

平田/ で、肝心なのは「私たちはどうしていきたいのか」ですので。

「私はこうしたい」で終わりじゃない。

kobeni/  女性の正規雇用者数ってずっと変化がなく、「働く女性」が増えている=非正規雇用が増えている、という現状があるので、(それは、ケア責任を持った人はパートでしか再就職しづらい、というのがひとつの要因ですが)それを踏まえると、二人の間のパワーバランスって、やっぱり「収入格差が絡んで、ホントの気持ちを言わない妻」と、「妻が特段なにか抱えているとは思ってない夫」の割合が、ケース的には多いってことになりませんか? もちろん、非正規雇用同士とか、正規雇用同士とかもあるだろうけど。

(参考)

この25年、女性の正規雇用は増えていない【データで見る女性と仕事】

 

平田/ 「収入格差が絡んで、ホントの気持ちを言わない妻」これは多いと思います。

「妻が特段なにか抱えているとは思ってない夫」これは、「特段何かを抱えているとは思ってない」というよりも、「何か機嫌悪そうだけど、パンドラの蓋をあけたくない」って感じ???

kobeni/  ふむ〜。それで「私たちはどうしていきたいのか」って、どういう感じになることが多いのですか?うまくやっていくには、どういう方向性がいいのかな?

平田/  「どうしていきたいのか」は、もうお二人次第です。100組いたら100通り出てきておかしくないんじゃないかな。

kobeni/  …ということは、ですね、「なぜか不機嫌な妻」「理解してくれない夫」みたいな状態を脱却したい夫婦は、タイムスピリットの存在を理解した上で、相手に寄り添って話をしてみる。というのはひとつ、あるかもですよね。やっぱり二人だと、どうしても水掛け論になってしまう…という場合は、ホントに平田さんところへ行ってもらって。

平田/  そうですね。

そしてですね、私がお二人をコーチングする際に、いきなりタイムスピリットの話はしないんですよ。その前に段階がありまして、まずは今、二人にある対立とか、わだかまりの感情を鎮めること、そして、話し合いの土壌を作るためにお互いを理解すること、これらの段階を踏まえて、タイムスピリットを扱ったりします。

ですので、お互いの関係が痛んでいないのであれば、お二人の間でタイムスピリットが影響してるなーから始めていただいていいんですが、そうでない場合は余計泥沼にはまる可能性があることを一応書いておきます。

kobeni/  おおおお……もう既に…どちらの気持ちも氷のようになってしまいかけてる可能性もあるわけですね…エルサみたいに…

 

平田/  ですです。

ちなみに、今日は、「ワーキングマザーを取り巻く状況からのタイムスピリット」という文脈でお話しましたが、二人の間が上手く行かなくなる要因はそれだけではなくて、例えば「タイムスピリット」だけでも、地震や放射性物質問題などもありますし、社会的・歴史的な問題じゃないけど、二人の関係に影響を与える「ゴースト」として、親や親戚の問題などもあります。ランクもお金以外もありますし、実際はご夫婦によって要因は様々です。

kobeni/  (ゴ、ゴースト…? 発言小町に地縛していそう……)なるほどーーーーー大変勉強になります。ありがとうございます。

 

ええと、ここからは、私個人の意見なのですが、

いくらそれが「金銭的に合理的」だったり、「能力的に合理的」だったりしても、女性が偏って非正規雇用になっちゃうとか、育休切りされちゃう…だと、社会構造上は、平田さんが就職された時代の女性差別の延長…になっちゃいますよね。サイボウズの彼女も、「(たとえばですが)業界の慣習上、自分がキャリア後退して、家事育児を多めに引き受けるのは当たり前」って思っているようだけど、そのままでいいのかと。正論になっちゃいますが。やっぱり、どうしてそうなっちゃうのか? に私は目を向けたく。

もちろん、優先されるのは各家庭のサバイバルなので、全員がやるべき!とは思わないんだけど、動ける余裕がある人は、やっぱり「選択肢を増やす」方に、なにかしら一歩踏み出した方が良いと思うんですよね。女性が仕事をずっと続けられるとか、男性も主夫になりたい人はなれる……とかを目指して。

タイムスピリットの不自由から自由になれるように。

平田/  そうですね、そう思います。

kobeni/  なかなか、それが難しいんだけど、現実との「折り合いは折り合い」、そして「理想は理想」として忘れないようにしたいなと…思うわけなのです……。

 

ちなみに…

最後にあのサイボウズの彼女に、平田さんから一言言うとしたら、なんですか…?

平田/  やっぱり「○○しなくちゃ」って思い込んでるんじゃないですか?ってことですよね。コーチングって思い込みを外すことも大事だから。

 

平田/  私からも2つちょっといいですか?手短に。

kobeni/  はい!もちろんです。

平田/  一つは、サイボウズ第二弾の「奥さんを抱っこできるのは…」ってオチですけど、あれは「わかるわかる」って人もいると思っています。

というのは、人が愛情を感じるタイプって5つあって、あの女性は「ボディタッチ」なんだと思います。(CMを企画した方の中に、ボディタッチタイプの方がいらしたんだと思います。)この話も面白いので、機会があればぜひ。

平田/  もう一つは、さっきのタイムスピリットを扱ったワークショップを、いろんな立場の人でできたら面白いだろうなと思っていて。子供あり/なし、結婚してる/独身、男性/女性とか。

kobeni/  おおおお、面白そうですね。

私、もう「ワーキングマザー」とかそういうことではなくて、これからの多様な働き方や子育て、生き方、家族の在り方なんかを考えたい人、みたいな括りで、みんなで考えていきたいと思っていて。

だから「いろんな立場でやる」はすごく良いですね。立場によって、別のタイムスピリットに縛られているという可能性はありますよね。

平田/ ありがとうございます。

 

kobeni/  きょうは、ホントにありがとうございました。ワークショップのご提案は、ありがたく頂戴しておきます。なにかしらの形で実現したい!

ありがとうございますーーーーーーーーーー!

平田/ ありがとうございました!!楽しかったです!!

kobeni/ おやすみなさいませ!!!!

 

 

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いかがでしたか? 平田さんの知恵と、経験と、優しさが炸裂する後編インタビューでした。

「夫婦の関係に正解はない」「大事なのは、思いやり」なんてよく言いますが、そうはいっても…という難しさがあるのが結婚だな、と思います。でも、夫婦コーチングって、「どっちかが勝ち」という風に、勝敗を決めるのが目的ではない。5年前のインタビューで教わりましたが、主役は夫でも妻でもなく、ふたりの「関係性」です。イメージとしては、自分たちでもほどけないぐらいにこんがらがってしまった糸を、コーチを交えてゆっくりほどいていく……という感じなのかなと思いました。ほどくことより、「自分のせいじゃない、と相手に認めさせたい」そのことを優先してしまったり、こんがらがった結び目から、ついつい目を逸らしたくなったり。そんなこと、ありますよね。ライフステージが変わる時というのは、糸がこんがらがりがち、なのかもしれません。しかしそれはきっと、絆を深めるチャンスでもあるはず! 正論で追いつめるのではなく、できない・わからないと開き直るのでもなく……この記事が「久しぶりの、夫・妻とのゆっくりした会話」の肴になってくれたり、なんかしたら、私は嬉しいです。たぶん、平田さんもね!

 

 

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