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kobeniの日記

仕事・育児・伏し目がちなメガネ男子などについて考えています

「働くマザーのストレス調査報告書」を読みました

ワーキングマザー 働く女性 育児 結婚 ジェンダー 仕事

 年末に後輩が「おもしろい調査を見つけたので共有します」とメールをくれました。それがリクルートワークス研究所の「働くマザーのストレス調査報告書」でした。昨年の10月にリリースされたものです。Twitterに流したら反響が大きかったので、忙しいお父さんお母さんでもザックリ概要をつかめるよう、要約&私の感想を簡単に記事にしてみようと思いました。

 

《プレスリリース》

リクルートワークス研究所がストレス調査を実施 仕事・プライベート両面から育児中のストレスを分析 | リクルートホールディングス - Recruit Holdings

 

《報告書》

http://www.works-i.com/pdf/151009_stress.pdf

 

(PDFで30Pあります)

 

この調査の最たるポイントは、ワーキングマザーが感じる「ストレスの把握」において、「仕事だけでなくプライベートも」含めて調査の対象とした部分だと思います。

労働者のストレスチェックに関しては、法律でも義務付けられたようですし、様々な例がありますが、プライベートも含めたチェックというのはあまり存在しないようです。そこに問題意識を持って実施されたのがこの調査ということです。

 

「特に働くマザーにおいては、プライベートでのストレスが様々に存在し、そのストレスが仕事へ影響を与えている可能性が大きいのではないか。これが、出産や子育てによる離職を増やしている要因になっていないか。 」(P.2)

 

当事者の私からすると「そりゃそうに決まってるじゃん」と思うのですが、だがしかし、こういった問いを立てられている&仮に薄々そう思っていたとしても、プライベートでのストレスまで踏み込んで解決をはかる、そんな企業がどれだけあるのか?というと疑問だなとも思いました。

 

この調査によって、ワーキングマザー独特のストレスの種類と強さを把握することで、「仕事への意欲や能力発揮を阻害する要因としてのストレスを顕在化」させ、「心身状態や活動へのストレスによる阻害状況を事前に把握」できるのではないかと考えた、と書いてあります。

つまり、この調査を最も活用できるのは、企業の人事部・管理職など、「ワーキングマザーを職場で活躍させたい」と考えている人たちではないでしょうか。もちろんマザー本人やその夫、マザー予備軍の人たちが知識として仕入れておいても、損はないと思います。ただ、調査の目的としては、「人事・マネジメントに活用してほしい」ということが第一義だと思いますので、調査はそれを念頭に置きつつ読んでいただけると幸いです。

ちなみに、ぜんぶで30P弱の調査報告書となっていますが、内容は平易な文体で、キャッチーな具体例も挙げられています。専門用語はあまり使わないで書かれており、読みやすいです。

 

 

■ ストレスが「強い」のは、配偶者(夫)に関する項目が多い

 

調査は大きく、「日常的なストレス(デイリーハッスル)」と「人生における大きな出来事のストレス(ライフイベント)」に分けて行われています。

 

まず、「日常的なストレス」の「強さ」ランキングは、P.7に載っています。

 

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ワーキングマザーが日々の中で「強いストレス」を感じる項目には、「配偶者の家事への非協力」や「保護者会やPTAなどの活動」など、プライベートの項目も含まれています。「(仕事で)急な休みがとりにくい」の項目と、「保護者会やPTAの活動」が同じくらいのストレス値で上位に食い込んでいます。「休めない、でも出なければならない」という、職場と学校の間で引き裂かれるような状態が強いストレスになっているのだろう、と想像できます。

 

続いて「ライフイベントのストレス」の「強さ」ランキングはP.8に載っています。

上位4つが「配偶者の失業、ギャンブル依存、DV、収入減」です。経験している人の割合はそこまで多くないですが、配偶者への期待値とそれを裏切られた時のストレスの強さがうかがえる結果です。

どちらの結果もですが、どうもワーキングマザーにとっては、夫の存在感がとても大きいのですね。夫との関係が良好であれば、ワーキングマザーのストレスはかなり少なくなる、ということかもしれません。

 

ちなみに「ライフイベントのストレス」の上位に、マザーもファザーも「不妊治療」が入っていることも見過ごせません。治療のために休みを取る必要があり、仕事にも影響の出ることなので、いっそうの理解や配慮がほしいところです。

 

ちなみに「働くファザー」のストレスは、そのほとんどが仕事に関することになっています。

(この「働くファザー」の調査結果を載せている意味が、私はちょっと疑問でした。ことあるごとに「一方、働くファザーは」と比較がなされているのですが、この人たちは必ずしも「共働きの夫」というサンプルではないようです。専業主婦家庭の夫も当然含まれているだろうから、たとえば「育児や家事に関するストレスが少ない(=そもそもほぼ担っていないので感じる機会も少ない)」というような結果は、当たり前のような気もします。ただ調査の中では、「こんなに夫は家事育児してない!」といったニュアンスで報告されている気がします。

もしかすると、ここに出てくる「働くファザー」=企業の中でのマジョリティということかもしれません。人事や管理職には、男性・とりわけ専業主婦の妻を持つ男性もまだまだ多いはずなので、その人たち、つまり「自分たち」と比較した場合のストレスの種類の違いに気づいてほしい、という意図なのでしょうか。

ただ、この掲載の仕方だと、「働くファザー」が何者なのか今ひとつハッキリせず、誤読を招く可能性があると思いました)

 

 

■ 人間関係や、子どものしつけなど、細かく多数のストレスを経験

 

「日常的なストレス」の「経験率」ランキング(経験した人が多い順)はP.9にあります。

 

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15位までがすべてプライベートの項目になってしまいました。私自身もこの上位15項目はすべて「体験したことがある」と思いました。

このストレスの内容って、「お母さん」が感じるものとしては当たり前なのかもしれません。でも、仕事をした上に、かつプライベートでも、近所や親戚の人間関係や家計のこと、子どものしつけ、生活、教育全般などについて、マザーたちがここまでストレスを感じながら暮らしているのかと思うと、やっぱりちょっと暗くなってしまいます。ファザーの調査結果に、「お弁当づくり」「家計の切り盛り」「子どもの整理整頓・片付け」「子どもの生活リズム」がまったく入っていないのにも、ちょっとショックを受けました。なんというか、性別役割分業をほぼなぞってるだけ、という感じの結果なので。

 

資生堂ショック」の報道で、女性が活躍する社会というのはつまり、男性やその女性を取り巻く周囲が、本人をサポートしなければ実現しないのだ、という事実がハッキリしたと思います。「お弁当づくり」「家計の切り盛り」「子どもの整理整頓・片付け」「子どもの生活リズム(を整える)」たとえばこのあたりを、ファザーが巻き取る、あるいはアウトソースするなどができれば、両立の妨げとなるストレスは大きく減りそうです。

 

 

■ 母親で抱え込まず、ファザー達に「意識して」あけ渡す

 

この結果から見えるように、「母親」は周囲から、子どもや親族にまつわる「人間関係」の維持を求められています。そして、そこに当人たちにとって「強めのストレス」が発生しています。

「小一の壁」の記事を書いたりしながら考えていたのですが、この「女・母親同士の人間関係」は、子どもが小学校に入ると、PTAなどを通してさらに強く求められるようになります。もちろん、「義務感から始まったママ友付き合いでしたが、今では最大の宝です」といったことも当然ありますし、「人間関係にストレスしかない」というわけではありません。けれど、ママ友ネットワークを(父親が「蚊帳の外だ」と感じるレベルで)強固にしすぎることによって、自分で自分の首を絞めている、ストレスを高めてしまっていることはないだろうか、とも思うのです。生き延びるためにママ友ネットワークがとても大事、それは分かる。でもお父さんたちにも、「意識して」明け渡す、彼らも人間関係の中に巻き込む、ということが大事じゃないかなと最近は考えています。

 

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ほかにも、いくつか注目したい項目がありました。

経験者は全体の4〜5%と少ないけれど、一年の間に「親との同居と別居」「子どもの病気による入院や手術」「雇用形態の変更」「配偶者の失業」「親の介護」などを経験している人がいる、という点。私も経験者ですが、こんなの、ギリギリまわしてる両立のバランスを一撃で吹き飛ばすストレスになり得ると思います! 人事部の方にはぜひ、こういった「小さな数値」まで見ておいて頂きたいと思います。

 

また、正規・非正規の別でストレス値を見た結果もあります。正社員と非正規社員マザーを比較した時に、差が大きい(非正規マザーの方がストレス値が高い)項目として、「離婚」「離婚の話し合い」「配偶者の家事・子育ての非協力」があるようです。雇用が安定しない状態だと、離婚した場合に経済的なダメージが大きいです。また非正規社員マザーの夫は、「家事や子育てを妻が担うのが当たり前と考える傾向があり、その夫へのストレスが大きいということか」(P.14)とも書いてありました。非正規社員だと仕事が楽、ということはあまりないのが現実なので、奥さんの方が給料が安いから家事育児は任せっきり、みたいなのは良くないと思いますけどね。

あと、意外に経験者が多かったのが「慢性的な睡眠不足」と「ダイエット」。朝は食事の用意から身支度までこなし、保育園まで自転車で子どもたちを送り、通勤電車にゆられて会社に着いたらノンストップで仕事、帰りはダッシュでお迎え、またノンストップで食事の支度、お風呂、寝かしつけ。疲れ切って毎日寝落ち、という方も多いのではないでしょうか。寝た方が翌日はラクだけど、ここで寝てしまうとまた「朝は」からの繰り返し、自分の時間が一切なくなるので、疲れていても無理して起きててみたり。家では子どもを追いかけてばかりで美容液をつける暇もない、とか。化粧ノリが悪い、なんかシワが増えたな、痩せにくくなったな、そういうのって、ジワジワとボディブローのようにストレスにつながりますよね。わかります、わかります。

しかし、この結果。それこそ資生堂さんに、こういった子育て世代の美容に関する悩み、なんとかしてほしいよー!と思いました。私たちの気持ちがわかる美容部員ママ、きっとたくさんいるんじゃないのかな?

 

 

 

■ これからは、「家族のこと」まで考慮したマネジメントが大切に

 

 

ワーキングマザーとして働くようになってから、それまでの何倍も、「プライベートのことを職場や上司に共有する必要性」を感じるようになりました。子供の病気や親の病気・介護など、「人生の中での大きな出来事(ライフイベント)」を共有する必要性も経験しました。

日本の会社においては、私生活を職場に持ち込むことをあまり良しとしない(「滅私奉公」というような)慣習があるのではないでしょうか。どうしてもプライベートを職場に共有せざるを得ない立場になってから、私はそういった慣習に疑問を持つようになりました。私はひとりの人間なので、「OFF」の生活に大きなストレスがあれば「ON」の私にある程度の影響を及ぼすのは当然のことなのに。

これからのマネジメントにおいては、たとえば妊娠・出産、不妊治療、親の介護など、社員の家族のことまで想像力を働かせ、必要な時に、適切な対応を取れる上司こそが、働くマザーをはじめとした従業員のパフォーマンス向上を実現できるのだろうなと思います。

 

 

 

 

調査「まとめ」となっている21P以降には、私たちワーキングマザー本人の意識改革を促すコメントもあります。ちょっと耳が痛いかもしれませんが、聞いておいた方が良さそうです。読んでみてください。