kobeniの日記

仕事・育児・目に見えない大切なものなどについて考えています。

舞台を観るのが好きです/「切実」を観てきました

早稲田どらま館でやっていた「切実」という舞台を観てきました。

男性3人のお芝居で、およそ60分の短い作品でした。シリーズで3年おきぐらいにやっているみたいですが、私は今回はじめて観に行きました。去年から、観劇にハマっていて、中でも小さめの劇場に行くのが好きなのですが、この作品は脚本が「バイプレイヤーズ」などのふじきみつ彦さんだったからと、「どらま館」に行ってみたかったこともあり、告知が始まった頃からずっと気になっていました。行こうかどうしようか迷っていると、残席ありますのツイートが流れてきた&おっさんずラブ脚本の徳尾さんが観に行かれたみたいで「おもしろかった」とツイートされていて、オンラインでサクッとチケットを取りました。

めっちゃくちゃ暑い1日だったけど、とても面白かったので行って良かったです。端的に言うと、「けっこう笑えて、旬なテーマで考えさせられる」という内容で、派手な演出とか超有名な役者さんとかはいないけれど、この内容で3000円は安い。たった1時間なのに、終わった時、もっと長いこと劇場に居たような感じがしました。

もう公演が今日で終わっているので、そこそこネタバレしますが、

子どもの登下校を見守る「見守り隊」隊員の日野さんというおっさんと、見守り隊の会長であるおっさんと、子どもを見守られている保護者のうちの一人であるおっさんが、放課後にその娘さんの誕生日会について話をする。というような内容です。日野さんはおそらく40代の、独身男性なのですが、子どもが大好きで、お誕生日会に向けて「おどるポンポコリン」をピアニカで弾く練習までしていたのに、恵里奈ちゃんだか優梨奈ちゃんだかのお父さんが、「昨今の情勢に鑑みてあなたのことはお誕生日会に呼べません」って言うんです。

 

「おっさんが3人で話をする」と書くと、バイプレイヤーズみたいに、あんまりハッキリした起承転結がない(意味を持たない)ように聞こえるかもですが、このお話は一時間の中に無駄が全くない、美しい起承転結で書かれているように感じました。前半で日野さんが一人で、会長さんを待ってる描写があるのですが、自分の汗をふいたタオルの匂いを嗅いだりしておりw 「ちょっと…」っていう感じのおっさんではあるのだが、ちっさいピンクのピアニカで「ヘビーローテーション」の練習をし出したりするので、「この人は…憎めない感じのおっさんなんだ…」と思わされます。そして後半の「お前は犯罪者の予備軍っぽいのでお誕生日会には呼べない」という話に繋がっていきます。


恵里奈ちゃんだか優梨奈ちゃんだか(名前こんなような漢字だよおそらく)のパパは、VERYで言うところの「イケダンみ」のある男性なのですが、子どもを巡る昨今の犯罪に鑑みて、

 

「実は私…見守り隊を見守っています

見守り隊を見守り隊の隊長です」

 

みたいなことを言い出します。見守り隊を見守り隊。さあどうなる恵里奈ちゃんのお誕生日会!!

 

 

 

 

全体的にコミカルなので、楽しい時間ではあるものの、テーマ的には「この、独身中年男性を雑にラベリングして差別する社会どうなの…」とか、「じゃあ実際に、近所に日野さんみたいな人がいたとして、日野さん、子どもの写真撮ってブログにあげたりして迂闊すぎるけど、悪い人じゃないよって説明してまわれるんだろうか私…」とか、いろいろ考えてしまいました。ね、「切実」でしょ。
(私、中年男性の切実さを描いた舞台って大好きなんです。赤堀雅秋さんのとかね)

 

 

ということで、「けっこう笑えて、旬なテーマで考えさせられる」私にとってはすっごい上質な一時間だったのでした。

 

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◾︎ 映画でもTVでもなく「舞台」って、何がいいのかな

 

最近、下北のスズナリや本多劇場東京芸術劇場などいろいろ行っていますが、大小問わず「舞台」が好きだなあと思い始めています。それはなぜか。


一番は、目の前で今、真剣にお芝居されると、こっちももの凄い集中力になってしまうということがあります。もしかしたらハプニングがあるかもしれない、というようなことを空間全体で予感しながら時を共有してるのでしょうか。事前に絶対にトイレ行っておかなきゃいけないな、という点だけ取っても大変なのですが、どうもその緊迫したライブ感がいちばん好きみたいです。
小さい劇場だと、当日券とか、遅めにチケットを取った場合、逆にいちばん前に通されるんですよ。私は「切実」もいちばん前の席だったのですが、役者さんと目を合わせないように、ときどき俯いてましたw でもいちばん前、楽しいです。

 

それから舞台って、TVや映画に比べて、商業的な成功をそこまで見越してない小さめの公演もあります。今日の「切実」も、たぶん円盤にはならないんじゃないかな。でも、だからこそ、「いらない(ど派手な)演出がない」です。行間読みとる力もそこそこ試されます。CMも入らないし。しかし脚本と演出と俳優陣は一流なわけです。脚本とか演出とかキャストとかで、だいたい自分好みかどうか予想できるので、「つまんなかった」「損した」と思うことがない。


映画やテレビは、原作があったり、撮影期間がずっと前だったりで、「めちゃくちゃ旬」が難しかったりすると思うけど、舞台は「なんだかすごく旬(なテーマ)」と感じることが多いです。それを、コンパクトに見せてもらえるのがとても好きなところです。

あらためて舞台ってすごいなあと思うのが、たとえば小さいステージだと、そこに「ファミレスの机と椅子」があって、「ガストで相談する話じゃないと思うけどね」の台詞が一言あるだけで、もうそこがガストにしか見えない、見えなくなるっていうことなんです。
今日の舞台も、木とベンチしかなかったんですが、私はもう学校の近くの公園でおっさん3人が放課後の見守りについて話しているようにしか見えなくて…
物語と、演出と、役者さん達の流れるようなお芝居(本当に、流れるようなお芝居だった)だけで、この何にもない空間でここまで人を引きつけることができるんだな、と、今日もしみじみ感動してしまいました。

 

 


演劇はたのしいなあと思っているので、今年から本格的な観劇ヲタになろうと思います。もちろんドラマや映画も観ますけどね。できるだけ感想を、絵や文章で、Twitterかブログに残していこうと思っています。

 

そういえば先日、中央線を待っていたら、「あの人ぜったい見たことある」という役者さんが同じ車両に乗っていました。恥ずかしくて声をかけられなかったのですが、東京にはたくさんの劇場があって、今日もたくさんの物語がつくられ、上演されてるんだよな、と思いました。観に行きたいと思った時に、今回のようにサッと行ってしまえるところが、東京に住んでいて良かったなあと、強く思うところです。

 

 

 

 

切実

 

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